mvl-bg-contrast-media-sub

Everything about X-ray Contrast Media

もう一つのアプローチ?

造影剤について書かれたものを読み始めると、遅かれ早かれ次のような一節に出会います。

今日における水溶性造影剤の基本骨格はトリヨードベンゼン環である。

このような文を読むたびに私はいつも感銘を受けてきました。そして、今でもそうです。たぶんそれは、私が化学の講義を受けたのがずっと昔だからでしょう。それはともかく、これは一体、何を意味しているのでしょうか。

皆さんは化学の授業で習ったベンゼン環のことを覚えていますか(覚えていなくてもかまわないのですが)。このベンゼン環は有名な化学者ケクレが―おそらく眠っている間に―発見した化合物で、6個の炭素原子で構成されています。6といえばケクレ(Kekule)の文字数やサイコロの面の数と同じですね(図1a)。このベンゼン環は、とても面白く、しかも安定した構造をしています。6つの角があり、そこにはいずれも1個の炭素原子があります。そして、話をわかりやすくするため、図1bに示すように、この炭素原子に時計回りに1~6の番号が振られています。

もう一つのアプローチ?

この6個の炭素の角には他の化学物質が結合しますが、これらは一般に「置換基」と呼ばれます。

あらゆる造影剤の元となる化合物は1番の位置の炭素原子の横にいわゆるカルボキシル基を持っています(図1cを参照)。カルボキシル基の化学式は、-COOHです。この置換基はプラスの電荷をもつ「H(陽子)」として水素のHを簡単に手放したり、水素を分離したりします。ですから「H」は多くの論文や化学式でも省略されてしまうのです。(「H」に関わりたい人なんていないですよね、「H」は肝炎(hepatitis)や痔(hemorrhoid)を思い出させるだけですから。ところで、ナポレオンが肝炎と痔の両方を患っていたことを知っていますか。理由はよくわかりませんが、このうち一つの方についてはあまり書かれていませんね)

さて-COOH基を付けたところで、ベンゼン環にはまだ5個の空席の角があります。今日の造影剤はトリヨードベンゼン環を基本骨格としているので、ベンゼン環に3個のヨード原子が付いています。このヨード原子は2、4、6番の角に結合しているので、これらの間には常に空きがあります(図1d)。ちょうどトランプ・ゲームをする時に、みんな誰かのすぐ隣の席には座らず、間に一人分の席を空けて座りたがるように。

図1.典型的な造影剤分子の開発

もう一つのアプローチ?

さて3個のヨード原子も付きましたが、まだ3番と5番の角の2つの席が空いています。ここには他の置換基を付けることもできます。
これらの置換基は互いに異なる化合物でもよく、化学式ではR(R1やR2など)と表す(訳者注:Rは「基radical」の略号です)(図1e)。

それから、簡単に言うと、これらの置換基はたいていの場合、ヒトの体内における造影剤の挙動に関わってきます。

復 習


ここまできたら皆さんは次の文を理解できるはずです。今日の造影剤はトリヨードベンゼン環の誘導体で、炭素原子1番にカルボキシル基(-COOH)1個、炭素原子2番、4番、6番にそれぞれヨード原子を1個ずつ備えています。トランプ・ゲームをする時のことを忘れないように。3番と5番にはさらに他の置換基が結合できますが、これらは体内での造影剤の挙動に大いに影響します。