造影検査を行うにあたり、検査の現場では様々な疑問や確認したい事項が生じ、一定の頻度で対処すべき副作用に遭遇する。特に種々の副作用やトラブルへの備えは必須である。造影MRI検査の場合はMRI検査自体の正しい認識も必要である。2011年12月に作成した『ちょっと役立つ造影検査に関する話題:MRI編』では、そういった造影MRI検査を行うにあたり知っておくべきことに関して質問とそれに答える形式にして作成し、お蔭様で放射線科医や検査依頼医、診療放射線技師、看護師など多くの関係者から現場で役に立つという好評を得た。
その後約8年が経過し脳内へのGd残存などの浮かび上がった事象や問題、NSFなどのほぼ解決したが現在も注意して予防すべき諸注意などの新たな知見も増え、今回改訂を行った。改訂にあたり、2018年に改訂された欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)のガイドライン(ver.10.0)や米国放射線医会(ACR)のガイドライン(ver.10.3)及び日本医学放射線学会の提言を参照した。
前回同様に見出しは質問形式になっており、自分の見たい項目がすぐに見つかるように「検査前」「検査時」「検査後」「副作用について」が色分けされて並んでいるため、時間の限られた検査現場で目次を見て該当箇所を読み、素早く対処できるように見やすくなっている。特に最後の「副作用について」は記述の中で、アナフィラキシーへの対処などを要領よく記載してあり、まず初めに目を通していただきたい。頻度は少ないながらも重篤な副作用は日々発生しており、迅速で適切な対処が副作用からの素早い回復につながる。
本小冊子は前述したようにMRI造影剤の中でも使用頻度の高いGd造影剤を中心にまとめたもので、前回同様に竹原康雄先生、林宏光先生に加え、五島聡先生のご指導を賜るとともに日本放射線科専門医会・医会のご後援を戴いた。またバイエル薬品株式会社とは内容を詳細にわたり共に検討し完成に至った。関係者の皆様のご協力、ご支援に心から感謝の意を表するとともに、本小冊子が造影検査に関わる多くの医療従事者の役に立つことを願ってやまない。
順天堂大学 放射線医学教室
桑鶴良平
2019年7月
分類 | キレート構造 | 製剤名(略号) | 一般名 | 販売会社 |
---|---|---|---|---|
細胞外液性 | 環状型(非イオン性) | ガドビスト(Gd-BT-DO3A) | ガドブトロール | バイエル薬品 |
環状型(非イオン性) | プロハンス(Gd-HP-DO3A) | ガドテリドール | エーザイ | |
環状型(イオン性) | マグネスコープ(Gd-DOTA) | ガドテル酸 | ゲルベ | |
線状型(イオン性) | マグネビスト(Gd-DTPA)※ | ガドペンテト酸 | バイエル薬品 | |
線状型(非イオン性) | オムニスキャン(Gd-DTPA-BMA) | ガドジアミド | 第一三共 | |
肝細胞特異性 | 線状型(イオン性) | EOB・プリモビスト(Gd-EOB-DTPA) | ガドキセト酸ナトリウム | バイエル薬品 |
※経過措置満了時期:2019年4月1日~2020年3月31日