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ちょっと役立つ
造影検査に関する話題
-MRI編- Ver.2.1

Ver.2.1での主な改訂点

はじめに

 2019年7月に本小冊子を改訂しVer.2.0版を刊行した。その後、時代の変化と機器や日用使用品の開発によりMRI検査時および造影MRI検査時に注意すべき点が増え、いくつかの点で改訂が必要と感じ、今回Ver.2.1版を作成した。改訂した項目については目次の前にまとめて記載し改訂点を明確にしたので、まずその部分を確認してご一読いただきたい。
 MRI検査時の大小の吸着事故は日常のMRI検査で生じており、その原因として体内の磁性物質に加え、近年では体外に多くの磁性物質を身に付けていることが挙げられる。磁性物質を身に付けていることを患者さんご本人は自覚していない場合もあり、吸着事故回避のためにMRI検査施行前に細心の注意とチェックが必要である。
 また、造影剤の添付文書は記載様式が改定され、「禁忌」の後に記載されていた「原則禁忌」と「使用上の注意」は、項目を再編して「禁忌」または「特定の背景を有する患者に関する注意」と「重要な基本的注意」という項目にまとめられた。Ver.2.1版では新項目を記載したが、造影剤の添付文書は今後全ての造影剤で新記載様式に変更されていくため、MRI用造影剤の添付文書を実際に一読して、より深い記載内容を熟知していただきたい。
 小児に対する造影MRI検査を行う場合の注意点については、「MRI検査時の鎮静に関する共同提言改訂版(2020)」に準拠した記載に改変したが、鎮静に関する医療事故防止のために必須な体制を組み小児の鎮静下MRI検査を施行することが望まれる。授乳婦に対する造影MRI検査施行についても造影剤の添付文書が修正されたことに合わせて改変した。造影剤の注入法については、MRI用造影剤は体内への投与量がヨード造影剤と比較して極端に少ないため、全身に効率的に造影剤を分布させる工夫が必要であり、そのいくつかの工夫について追記した。
 2022年8月にアナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂となったため、Ver.2.1版でもアナフィラキシーの診断と対応を中心に改訂した。造影剤投与によるアナフィラキシー発生は一定の頻度で発生しており、検査に関わる医療従事者がアナフィラキシー発生時に、秩序を維持しながら迅速かつ適切に対応することが求められる。
 本小冊子は、前回同様に竹原康雄先生、林宏光先生、五島聡先生のご指導を賜るとともに日本放射線科専門医会・医会のご後援をいただいた。またバイエル薬品株式会社とは内容を詳細にわたり共に検討し完成に至った。関係者の皆様のご協力、ご支援に心から感謝の意を表する。

順天堂大学 放射線医学教室
桑鶴良平
2022年11月

ガドリニウム(Gd)造影剤の一覧表

分類 キレート構造 製剤名(略号) 一般名 販売会社
細胞外液性 環状型(非イオン性) ガドビスト(Gd-BT-DO3A) ガドブトロール バイエル薬品
環状型(非イオン性) プロハンス(Gd-HP-DO3A) ガドテリドール エーザイ
環状型(イオン性) マグネスコープ(Gd-DOTA) ガドテル酸メグルミン ゲルべ・ジャパン
線状型(非イオン性) オムニスキャン(Gd-DTPA-BMA) ガドジアミド水和物 GEヘルスケア
ファーマ
肝細胞特異性 線状型(イオン性) EOB・プリモビスト(Gd-EOB-DTPA) ガドキセト酸ナトリウム バイエル薬品

医薬品、医療機器においては、薬機法の改正により、2021年8月から、従来の紙による添付文書は、経過措置期限である2023年7月31日までに原則として廃止され、以後は電子的な方法(電子添文)で閲覧することとなっています。現在、当該経過措置期限内であり、電子添文化されている製品とそうでない製品が存在することを考慮し、本冊子では「添付文書」という用語で統一しています。