造影CT検査の
さらなる安全管理の向上を目指し
イオプロミド注シリンジ「BYL」のRFID情報がもたらすメリット
鹿児島市立病院では、放射線科・放射線技術科からなる放射線部が一体となり運用しています(放射線科は中山博史部長含め読影医5名、放射線技術科は西元辰也科長を含め34名)。そのうち、宮原洋一主査を責任者とした放射線技師5名、外来検査治療室(津ひろみ師長)所属の看護師2名、受付2名の体制で年間約9,000例*1の造影CT検査が施行されており、その検査内容と使用された造影剤情報は、放射線技術科のみならず、他科の医療関係者も検査内容を必要に応じて閲覧できるようになっています。こうした体制の中で、さらに造影検査情報の管理・共有を徹底するために、2022年3月より、後発品の中で唯一RFID*2が搭載された非イオン性尿路・血管造影剤イオプロミド注シリンジ「BYL」が導入されました。放射線技術科の隈浩司先生に、本剤導入の背景およびRFID情報の活用方法についてお伺いしました。
*1:320列CT装置3台の総計。
*2:Radio Frequency Identification(高周波識別子)。電波を用いてICタグの情報を非接触で読み取る自動認識技術。
鹿児島市立病院 放射線技術科
隈 浩司 先生
安全管理、副作用管理、業務効率メリットを考慮してイオプロミド注シリンジ「BYL」を導入
― 本剤の導入には、どのような経緯や理由があったのでしょうか。
実は当院では、本剤の導入前から非イオン性尿路・血管造影剤がすでに4剤使用されていたため、当初は、さらなる製剤の追加には必要性を疑問視する意見もありました。しかし、そうした反対意見も乗り越えるだけのメリットが本剤にあると感じて、造影剤のラインナップを見直すことになりました。
そのメリットとは、RFIDです。当院の造影剤自動注入器は、Stellant(バイエル薬品)とDual Shot Gx7(根本杏林堂社)の2種類が稼働しています。これらの造影剤自動注入器にはRFIDリーダー(読み取り装置)が搭載されていますが、これまで主に使用していた造影剤にはRFIDがなかったことから活用できていませんでした。今回、このRFIDリーダーを活用することで、手入力による造影剤情報の転記ミスを回避でき、業務の効率化を図ろうと考えました。もちろん、造影剤による副作用が懸念される場合も製剤の種類の選択肢をより多く持っていれば、切替えにより副作用を軽減できる可能性があることなども考慮し、導入に至りました。
データの参照、患者さんへの情報提供、在庫管理など、さまざまな場面で活用されるRFID情報
― 造影検査情報はどのような場面で利用されるのでしょうか。
RFIDからの情報は、他の検査情報とともに検査画像管理システムであるPACSに送信され、院内全体で共有しています。PACS上では、検査画像とともに、使用した造影剤の製剤情報や注入情報を確認し検査の振り返りなどができます(図1)。
また、当院では造影検査を施行された患者さんに、注意事項と造影剤情報を記載した用紙を配布しています(図2)。この造影剤情報は手書きのため、記載漏れや誤記入を一切無くすことは難しいのですが、PACS上で共有された造影剤情報を確認することで、放射線技術科以外の診療科のスタッフも記載ミスをチェックしています。
その他にも、棚卸の際の、払出した造影剤数と在庫数に差異がある場合の確認資料としても活用しています。
図1
図2
― RFID情報を活用することで、どのような点で業務効率が改善しましたでしょうか。
日々の在庫管理の効率化です。誤った製剤情報を入力したことで払出した造影剤数と在庫数が合わなくなると、その対応は非常に大変で、医療事務の方々にも負担をかけてしまいますが、そうしたミスも回避できます。
また、将来的には造影剤情報を会計情報に紐づけることも検討しています。そのためには、ヒューマンエラーが発生せず、自動で造影剤情報を記録が可能であるRFIDは必須のアイテムとなります。造影剤の入力情報に誤りがあって、それに基づいて実際とは異なる薬価で患者さんに請求をしてしまうと、それは患者さんの病院への信頼を損ないかねません。患者さんとの信頼関係を守るという点でも、RFIDを活用することの意義は非常に大きいと思われます。
― RFID情報を活用することで、どのような点で安全性が高まったのでしょうか。
RFIDのない造影剤の場合は、造影剤自動注入器に事前に登録した製剤リストから使用する製品名(容量)を手動で選択する必要があるため、選び間違いが起こる可能性があります。それは患者さんの造影剤投与歴を参照できなくなり、次回検査時の造影剤選択に影響がでることに繋がると考えられ、特に造影剤の副作用歴のある患者さんでは、問題となり得ます。一方、RFIDがある造影剤は、自動で読み込まれるため、そこでのヒューマンエラーがなく造影検査情報の管理の観点から安全性が高まります。
さらに、RFIDを読み取ることで、ロット番号も自動で記録されます。従来、重大な副作用が生じた際のロット番号の確認は、スタッフの手で使用した製品を特定する必要がありましたが、RFIDの記録を振り返ることで、そうした業務も省略することができます。業務の効率化のみならず、医療安全の観点からも、RFIDのメリットは大きいと考えています。
副作用管理や医療安全の向上と現場の効率性を考慮して本剤導入が勧められる
― これから本剤の導入を検討されるご施設にメッセージをお願いします。
すでに複数の造影剤を使用しているご施設に対しても、私は本剤の導入をお勧めしたいと考えています。取り扱う薬剤数を増やすことは、在庫管理の観点からは決して容易なことではないと思われます。しかし、副作用管理や医療安全の向上、また効率よく簡便に選択ミスなく現場の作業を進めるために、本剤の導入は一考の価値があると私は考えております。