イオプロミド血管内投与の使用における安全性と忍容性:3件の非介入試験132,012例のデータによる統合解析(海外データ)
Safety and tolerability of iopromide intravascular use: a pooled analysis of three non-interventional studies in 132,012 patients
Petra K Palkowitsch et al. Acta Radiologica 2014;55(6):707-714
利益相反:本統合解析は、バイエル社の資金提供により実施された。また、著者2名はバイエル社社員である。
警告・禁忌を含む注意事項等の情報は電子添文をご参照ください。
目的
本解析は,3件の国際多施設共同非介入試験(市販後調査)における13万例を超える患者の併合データを用い,実臨床においてX線造影検査で使用されるイオプロミドの安全性プロファイルを評価するために実施された.
対 象 | 本統合解析では,37ヵ国1600超の施設から132,012例の患者データを用いた.全患者の半数以上はドイツ,中国,韓国にて組み入れられた. 性別:男性70,911例(53.7%),女性59,517例(45.1%),指定なし1,584例(1.2%) 年齢中央値:57.0歳(四分位範囲45~68歳) |
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研究デザイン | 観察研究(市販後調査:3件の国際多施設共同非介入研究データによる統合解析) |
方 法 | 本統合解析は,実臨床における造影剤の使用について、イオプロミドを投与された患者を対象とした試験のデータを用いて実施した. 研究デザイン 統合解析法 |
評価項目** | 実臨床におけるX線造影検査におけるイオプロミドの安全性プロファイル |
**本資料は、イオプロミドの安全性に関するエビデンスを提供することを目的として作成した.そのため、論文中の有効性に関する情報については言及していない。
本統合解析には,37ヵ国1600超の施設の患者132,012例のデータを用いた.
本解析では,全例の半数以上がドイツ,中国,または韓国にて組み入れられた.性別は男性70,911例(53.7%),女性59,517例(45.1%),指定なし1,584例(1.2%)であった.
年齢中央値は57.0歳(四分位範囲45~68歳),患者の大半(61.5%)は50歳以上であり,2.4%は18歳未満であった.
患者の1/3(35.2%)は,1つ以上の合併症を有しており,そのうち最も高頻度であった合併症は,冠動脈疾患(9.5%)であり、次いで高血圧(6.3%),糖尿病(6.1%)であった(表1).
表1 特定の合併症を有する患者数およびその割合*
合併症 | 例数(%) |
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合併症を有する患者 | 46,513 (35.2) |
冠動脈疾患 | 12,573 (9.5) |
高血圧 | 8,380 (6.3) |
糖尿病 | 8,118 (6.1) |
全身状態低下 | 7,529 (5.7) |
その他 | 18,387 (13.9) |
造影剤リスク因子を有する患者† | 5,215 (4.0) |
アレルギー | 3,853 (2.9) |
気管支喘息 | 879 (0.7) |
造影剤副作用歴 | 701 (0.5) |
*複数回答可
†造影剤リスク因子:アレルギー, 気管支喘息または造影剤副作用歴
前投薬ありの患者は,全体では15,593例(11.8%),「造影剤リスク因子を有する患者」では1,504例(28.6%)であった.全体と「造影剤リスク因子を有する患者」の両方で最も高頻度に使用された前投薬の薬剤は,コルチコステロイドであった(39.5%).
検査および造影剤投与
検査の種類では,CT(106,036例[80.3%]),尿路撮影(11,064例[8.4%]),その他/情報なし(9,770例[7.4%],血管心臓撮影(2,644[2.0%]),血管撮影(1,905例[1.4%]),静脈撮影(333例[0.3%]),DSA(260例[0.2%])の順の頻度で実施された.
全体で95,555例がイオプロミド300mgl/mL(72.4%),36,457例が370mgl/mL(27.6%)の投与を受け,その大半が静脈内投与であった(120,758例[91.5%],動脈内投与は11,254例[8.5%]).平均投与量(標準偏差)は31g(±13.2g)であり,患者の大半(89,865例[68.1%])のヨード投与量は20~40gであった.
安全性
副作用
副作用は130,012例中3,283例(2.49%)で認められ,そのうち重篤な副作用は19例(0.01%)であった(表2).
表2 安全性の概要
例数(%) | |
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副作用が発現した患者 | 3,283 (2.49) |
忍容性指標*を除く1件以上の副作用が発現した患者 | 1,983 (1.50) |
重篤な副作用が発現した患者 | 19 (0.01) |
死亡例 | 0 (0.00) |
*「忍容性指標」は、軽度の注射部位熱感,熱感または注射部位疼痛発現と定義した.
性別の副作用発現は,男性1,586例(2.2%),女性1,680例(2.8%)であった(性別不明で17例認められた).
年齢別の副作用発現は,18歳未満で98例(3.2%),18-49歳で1,261例(3.5%),50‒69歳で1,224 例(2.2%),70歳以上で362例 (1.5%)であった.
副作用の程度、治療処置および転帰
発現した多くの副作用は軽度であり,治療などの処置は必要なく回復した.
高頻度に発現した副作用を表3に示す.
表3 副作用の発現頻度*
症状 | 例数(%) |
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注射部位熱感/熱感 | 2,021 (1.5) |
悪心/嘔吐 | 689 (0.5) |
味覚障害 | 529 (0.4) |
紅斑/蕁麻疹/発疹/丘疹 | 380 (0.3) |
そう痒感 | 225 (0.2) |
*発現頻度≧0.1%
重篤な副作用
重篤な副作用が45件19例(0.01%)で報告された.最も高頻度に発現した重篤な副作用は呼吸困難/気管支痙攣(7件),浮腫(6件),血圧上昇/低下(5件),および紅斑/蕁麻疹/発疹/丘疹(5件)であった。
3件(2例)の副作用は生命を脅かす事例であった.10件(3例)の重篤な副作用が「造影剤リスク因子を有する患者」で発現した.死亡例の報告はなかった.
「造影剤リスク因子を有する患者」における副作用
表4に「造影剤リスク因子を有する患者」における副作用の発現率を示す.
副作用の発現率は,「造影剤リスク因子を有する患者」(5.00%)の方が,全体(2.49%)より高かった.注射部位熱感および/または熱感は,全体(1.53%)より「造影剤リスク因子を有する患者」(2.59%)で高頻度に発現した.蕁麻疹,紅斑,発疹および/または丘疹も,全体より「造影剤リスク因子を有する患者」で高頻度に発現した(0.29%対0.81%).
表4「造影剤リスク因子を有する患者」*における副作用†
造影剤リスク因子を有する患者(5,215例) 例数(%) | 全患者(132,012例) 例数(%) | |
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副作用が発現した患者 | 261 (5.00) | 3,283 (2.49) |
注射部位熱感/熱感、 | 135 (2.59) | 2,021 (1.53) |
忍容性指標‡を除く1件以上の副作用の発現 | 203 (3.89) | 1,983 (1.50) |
「忍容性指標」‡副作用のみ発現 | 58 (1.11) | 1,300 (0.98) |
悪心嘔吐 | 66 (1.27) | 689 (0.52) |
蕁麻疹/紅斑/発疹/丘疹 | 42 (0.81) | 380 (0.29) |
咳嗽/くしゃみ | 18 (0.35) | 115 (0.09) |
呼吸困難/気管支痙攣 | 15 (0.29) | 63 (0.05) |
血圧上昇/低下 | 5 (0.10) | 47 (0.04) |
*「造影剤リスク因子を有する患者」とは、アレルギー,気管支喘息,造影剤副作用歴を有する患者とした.
†発現頻度≧0.1%
‡「忍容性指標」は、注射部位熱感,熱感または注射部位疼痛(ただし,軽度の場合のみ)の発現と定義した.
前投薬ありで「造影剤リスク因子を有する患者」における副作用
副作用発現率は, 前投薬ありの患者で3.9%,前投薬なしの患者で5.5%であった. 注射部位熱感/熱感は, それぞれ1.4%, 3.1%であった.
結論
本大規模統合解析から,アジア,ヨーロッパ諸国,米国の患者の実臨床におけるイオプロミド血管内投与の安全性プロファイルが示された.
本解析は,実臨床におけるイオプロミドの安全性と忍容性を評価した最大規模の観察的国際的併合データセット(132,012例)を使用した初めての研究であり,用いた例数が多いことで,イオプロミドの使用中に発現した事象の発現率も定量化することができた.
イオプロミドの血管内投与による副作用の発現率は低く,副作用のプロファイルは,他の非イオン性モノマー型ヨード造影剤について発表されたデータとよく一致していた.イオプロミドを投与した患者における急性の副作用に関連するリスク因子は,造影剤副作用歴などのアレルギー素因や性別(女性)である.
References
1)
Kopp AF, et al. Acta Radiol 2008;49:902-911.
2)
Palkowitsch P, et al. Submitted manuscript.
3)
Palkowitsch P, et al. Acta Radiol 2012;53:179-186.
参考文献に関する利益相反
参考文献1-3) Bayer社の資金提供により実施されており, 著者にBayer社員が含まれる.