脳腫瘍の造影病変: 臨床における0.1mmol/kg投与量でのガドブトロール(1.0M)とガドテル酸メグルミン(0.5M)の多施設無作為化クロスオーバー比較
Cerebral Neoplastic Enhancing Lesions: Multicenter, Randomized, Crossover Intraindividual Comparison between Gadobutrol (1.0 M) and Gadoterate Meglumine (0.5 M) at 0.1 mmol Gd/kg Body Weight in a Clinical Setting. Anzalone N, et al. Eur J Radiol. 2013; 82:139-145.
本研究における著者には,独バイエル社から資金提供を受けている医師が含まれるほか, 独バイエル社の社員も含まれる.
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Point of Article
本試験は,ガドブトロールおよびガドテル酸メグルミンによる脳腫瘍の造影MRIでの造影効果の比較を目的とした,多施設無作為化クロスオーバー試験である.本試験において,ガドブトロールは等モル量のガドテル酸メグルミンと比較して,定性的にも定量的にも良好な造影効果を示した.
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対 象 | 2008年3月~2009年5月の間,イタリアの12施設において,頭蓋内または頭蓋外腫瘍の造影MRIが予定された患者166例が登録された(有効性解析例:136例). |
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試験デザイン | 前向き,多施設,無作為化クロスオーバー,ガドテル酸メグルミン対照 |
試験方法 | 投与方法:ガドブトロール0.1mmol/kgおよびガドテル酸メグルミン0.1mmol/kgを用手注入または自動注入器により1~2mL/秒で静脈内投与した. 造影剤の投与順序:初回MRIでいずれかの造影剤を投与し,その後48時間~7日の間隔を空けてクロスオーバーに他方の造影剤を投与した. MRI装置:1.0Tまたは1.5T 非造影画像:T1強調画像,T2強調画像,FLAIR画像 造影画像:T1強調画像 |
評価 |
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1)SI lesion / SI brain , 2)SI lesion-- SI brain / SD noise, 3)100×(SI post -SI pre)/ SI pre
総合的な評価に関して,ガドブトロールが“好ましい”/差はない/ガドテル酸メグルミンが“好ましい”と評価された画像の比率は,読影医1が54%/19%/27%,読影医2が18%/76%/6%,読影医3が32%/46%/22%,臨床評価医が43%/31%/26%で,読影医1,2と臨床評価医でガドブトロールが“好ましい”の比率が有意に高かった(読影医1:P=0.0005,読影医2:P=0.0034,臨床担当医:P=0.0224,two-sided Wilcoxonsigned rank test)(表1).
病変に関する造影効果に関しては,読影医3名と臨床評価医の全評価者で,ガドブトロールが“好ましい”と評価した画像が有意に多かった(P=0.0002,P=0.0057,P=0.0316,P=0.0060,two-sided Wilcoxonsigned rank test).病変の辺縁明瞭度に関しては,読影医3名と臨床評価医とも,“好ましい”とした画像数は両造影剤間で有意差はなかった.また、病変の内部構造に関しては,読影医1名で,ガドブトロールが“好ましい”と評価した画像が有意に多く(P=0.0466,two-sided Wilcoxon signed rank test),残りの読影医2名と臨床評価医は両造影剤間では差はなかった(表2).
病変に関する造影効果,辺縁明瞭度,内部構造について,ガドテル酸メグルミンよりもガドブトロールで画質改善が示された画像を示す(図1).
ガドブトロールはガドテル酸メグルミンと比較して,病変と脳組織の信号強度比および病変の信号増強率が有意に高かった(いずれもP=0.0003,two-sidedpairedt-test).病変と脳組織のCNRに有意差はみられなかった(表3).
表1 総合的な造影効果の評価
評価者 | 例数a | 読影医の評価[例数(%)] | P値b | ||
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ガドブトロールが“好ましい” | 差はない | ガドテル酸メグルミンが“好ましい” | |||
読影医1 | 124 | 67(54) | 24(19) | 33(27) | 0.0005 |
読影医2 | 120 | 22(18) | 91(76) | 7(6) | 0.0034 |
読影医3 | 130 | 42(32) | 60(46) | 28(22) | 0.0945 |
臨床評価医 | 136 | 58(43) | 42(31) | 36(26) | 0.0224 |
a 臨床評価医は全検査の定性評価をおこなった.読影医は少なくとも1ヵ所の造影病変が検出された場合のみ定性評価を行った.
b two-sided Wilcoxon signed rank test.
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表2 病変に関する造影効果,辺縁明瞭度,内部構造の評価
評価者 | 例数a | 読影医の評価[例数(%)] | P値a | ||
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ガドブトロールが“好ましい” | 差はない | ガドテル酸メグルミンが“好ましい” | |||
A.造影効果 | |||||
読影医1 | 124 | 68(55) | 24(19) | 32(26) | 0.0002 |
読影医2 | 120 | 21(18) | 92(77) | 7(6) | 0.0057 |
読影医3 | 130 | 49(38) | 51(39) | 30(23) | 0.0316 |
臨床評価医 | 136 | 55(40) | 51(38) | 30(22) | 0.0060 |
B.辺縁明瞭度 | |||||
読影医1 | 124 | 26(21) | 81(65) | 17(14) | 0.1727 |
読影医2 | 120 | 6(5) | 109(91) | 5(4) | 1.0000 |
読影医3 | 130 | 19(15) | 99(76) | 12(9) | 0.2140 |
臨床評価医 | 136 | 24(18) | 92(68) | 20(15) | 0.5526 |
C.内部構造 | |||||
読影医1 | 124 | 32(26) | 74(60) | 18(15) | 0.0466 |
読影医2 | 120 | 7(6) | 110(92) | 3(3) | 0.3438 |
読影医3 | 130 | 24(18) | 89(69) | 17(3) | 0.2797 |
臨床評価医 | 136 | 38(28) | 74(54) | 24(18) | 0.0752 |
a 臨床評価医は造影病変の有無に関わらず定性評価をおこない,読影医は造影病変があり組み合せ画像の評価が可能な場合に定性評価をおこなった.
b two-sided Wilcoxon signed rank test.
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図1 膠芽腫症例の造影MR画像
両側前頭葉に,膠芽腫に典型的なbutterfly patternの浸潤を認める(A,B).
ガドブトロール投与症例(D)では,腫瘍はより強く増強されている.
腫瘍の辺縁はより明瞭(→)で内部構造もより判別でき,ほとんどの悪性部分を描出している.
造影後28時間の経過観察期間中に,造影剤を1回以上投与した160例中8例(10件)に,有害事象が発現した.10件(ガドブトロール6件,ガドテル酸メグルミン4件)ともに薬剤との関連は認められず,すべて軽度で2日以内に回復した.
脳腫瘍の造影MRI画像の読影医による盲検評価において,ガドブトロール0.1mmol/kgはガドテル酸メグルミン0.1mmol/kgと比較して,定性的にも定量的にも良好な造影効果を示した.造影検査後28時間の経過観察期間中,薬剤と関連を示す有害事象は認められず,忍容性も良好であった.
表3 病変および脳組織の信号強度比およびCNR,病変の信号増強率の評価a
例数 | 平均 | 標準偏差 | P値b | |
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病変と脳組織の信号強度比 | ||||
ガドブトロール | 124 | 1.596 | 0.369 | |
ガドテル酸メグルミン | 122 | 1.541 | 0.372 | |
差 | 122 | 0.059 | 0.176 | 0.0003 |
病変と脳組織のCNR | ||||
ガドブトロール | 124 | 129.337 | 335.065 | |
ガドテル酸メグルミン | 122 | 98.281 | 146.182 | |
差 | 122 | 32.693 | 304.003 | 0.2372 |
病変の信号増強率 | ||||
ガドブトロール | 122 | 97.962 | 55.644 | |
ガドテル酸メグルミン | 122 | 89.164 | 53.427 | |
差 | 8.938 | 26.044 | 0.0003 |
a 測定は読影医1名がおこなった.
b two-sided paired t-test.
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PP-GAD-JP-0442-20-11