原発性および続発性脳腫瘍患者におけるMRI用造影剤ガドブトロールとガドテリドールの盲検読影による同一患者,無作為化比較
Intra-individual, Randomised Comparison of the MRI Contrast Agents Gadobutrol versus Gadoteridol in Patients with Primary and Secondary Brain Tumours, Evaluated in a Blinded Read. Koenig M, et al. Eur Radiol 2013;23:3287-3295.
利益相反:本研究は, バイエル社の資金提供により実施された.
効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む注意事項等情報等については、電子添文をご参照ください。
Point of Article
本試験は,ガドブトロールおよびガドテリドールによる脳腫瘍の造影MRIでの比較を目的とした,単一施設での同一患者クロスオーバー比較試験である.本試験では,ガドブトロールとガドテリドールの定性的評価および定量的評価に基づき,両者の比較を行った.その結果,ガドブトロールの脳腫瘍に対する良好な造影効果が確認された.
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対 象 | 2008年7月~2010年5月の間,ドイツの単一施設において,中枢神経系病変を有する術前の頭部MRI検査が予定された患者59例が登録された(プロトコール適合集団:44例,全解析集団:51例). |
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試験デザイン | 前向き,単一施設,無作為化,クロスオーバー,ガドテリドール対照 |
試験方法 | 投与方法:ガドブトロール0.1mmol/kgおよびガドテリドール0.1mmol/kgを自動注入器により2mL/秒で静脈内投与後,少なくとも生食20mLをフラッシュした 造影剤の投与順序:最初に,いずれかの造影剤を投与し,その後12時間~7日の間隔を空けてクロスオーバーに他方の造影剤を投与した. MRI装置:1.5T(Siemens社製 MAGNETOM Avanto) 撮像法:造影剤投与後,T1 FLASH,MPRAGE,T1 SE,T1 FLASHの順で撮像を行った(図). |
評 価 | 主要評価項目:造影効果(定性評価) 画像評価は,2名の読影医が別々に盲検下で行った.同一患者の両造影剤による造影画像を比較し,いずれかの画像がもう一方より,“優れる”,“同等”,“劣る”と評価した. 副次評価項目:➀造影検査としての総合評価,➁診断の質(Diagnstic Quality)に関する総合評価,➂各撮像法別に,1)病変の描出,2)病変と正常組織との境界,3)病変の内部構造,についてそれぞれ上記3段階で評価した(定性評価).そのほか,➃病変と正常脳組織の信号雑音比(SNR)およびコントラスト雑音比(CNR)に関する評価を行った(定量評価). |
図 本試験におけるワークフローとMRI撮像法
原発性および続発性脳腫瘍患者におけるMRI用造影剤ガドブトロールとガドテリドールの盲検読影による同一患者,無作為化比較
プロトコール適合集団44例の解析では,読影医2名とも68%の画像でガドブトロールが“優れる”と判定した(p=0.0226,p=0.005,two-sided sign test).全解析集団51例の解析では,読影医1が69%,読影医2が67%の画像で,ガドブトロールが“優れる”と判定した(p=0.0110,p=0.0002,two-sided sign test).いずれの解析集団でも,ガドブトロールの画像で“優れる”の評価が多かった(表1).
プロトコール適合集団44例の解析において,造影検査としての総合評価に関しては,読影医1が70%,読影医2が68%でガドブトロールが“優れる”と評価した(p=0.0096,p=0.0005,two-sided sign test)(表2).また,診断の質に関する総合評価に関しては,読影医1が70%,読影医2が34%で,ガドブトロールが“優れる”と評価した(p=0.0096,p=0.0075,two-sided sign test)(表3).いずれもガドブトロールが“優れる”の比率が有意に高かった.また,全解析集団においても同様の結果であった.
各撮像法別の病変の評価(描出,正常組織との境界,内部構造)では,T1 FLASH(1回目)を除き,MPRAGE,T1 SE,T1 FLASH(2回目)では,いずれもガドブトロールの画像が“優れる”の比率が高かった(表4).
表1 ガドブトロールとガドテリドールの造影効果の評価(主要評価項目)
解析集団 | 評価者 | 例数 | 画像が“優れる”と評価された例数(%) | p値a | ||
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ガドテリドール | 同等 | ガドブトロール | ||||
プロトコール適合集団 | 読影医1 | 44 | 14(32%) | 0(0%) | 30(68%) | 0.0226 |
読影医2 | 44 | 8(18%) | 6(14%) | 30(68%) | 0.0005 | |
全解析集団 | 読影医1 | 51 | 16(31%) | 0(0%) | 35(69%) | 0.0110 |
読影医2 | 51 | 9(18%) | 8(16%) | 34(67%) | 0.0002 |
a two-sided test
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撮像法別の造影画像による病変-脳組織コントラスト雑音比(CNR)は,読影医2名とも,MPRAGE(ΔLBC※=3.89;p=0.0186),T1 SE(ΔLBC=10.59;p=0.0077),T1 FLASH(2回目)(ΔLBC=11.15;p=0.0021)でガドブトロールが有意に優れると評価され,T1 FLASH(1回目)では差はなかった.病変の信号雑音比(SNR)は,読影医2名とも,T1 FLASH(2回目)でガドブトロールが有意に高値(p=0.0087)を示したが,その他では有意差は認められなかった.
※ LBC:lesion-to-brain contrast
表2 造影検査としての総合評価(副次評価項目
解析集団 | 評価者 | 例数 | 画像が“優れる”と評価された例数(%) | p値a | ||
---|---|---|---|---|---|---|
ガドテリドール | 同等 | ガドブトロール | ||||
プロトコール適合集団 | 読影医1 | 44 | 13(30%) | 0(0%) | 31(70%) | 0.0096 |
読影医2 | 44 | 8(18%) | 6(14%) | 30(68%) | 0.0005 | |
全解析集団 | 読影医1 | 51 | 15(29%) | 0(0%) | 36(71%) | 0.0046 |
読影医2 | 51 | 9(18%) | 8(16%) | 34(67%) | 0.0002 |
a two-sided sign test.
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表3 診断の質に関する総合評価(副次評価項目
解析集団 | 評価者 | 例数 | 画像が“優れる”と評価された例数(%) | p値a | ||
---|---|---|---|---|---|---|
ガドテリドール | 同等 | ガドブトロール | ||||
プロトコール適合集団 | 読影医1 | 44 | 13(30%) | 0(0%) | 31(70%) | 0.0096 |
読影医2 | 44 | 3(7%) | 26(59%) | 15(34%) | 0.0075 | |
全解析集団 | 読影医1 | 51 | 15(29%) | 0(0%) | 36(71%) | 0.0046 |
読影医2 | 51 | 3(6%) | 30(59%) | 18(35%) | 0.0015 |
atwo-sided sign test.
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原発性および続発性脳腫瘍患者におけるMRI用造影剤ガドブトロールとガドテリドールの盲検読影による同一患者,無作為化比較
安全性解析集団59例において,予期しない有害事象や重篤な有害事象は発現しなかった.
表4 各撮像法別の評価(主要評価項目および副次評価項目)
撮像法 | 解析集団 | 病変の特性 | |||
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造影効果 | 病変の描出 | 病変と正常組織との境界 | 病変の内部構造 | ||
T1 FLASH(1回目) | プロトコール適合集団 | 0.51(0.35; 0.66) | 0.56(0.39; 0.71) | 0.55(0.38; 0.71) | 0.56(0.39; 0.72) |
全解析集団 | 0.53(0.38; 0.68) | 0.57(0.41; 0.72) | 0.57(0.41; 0.72) | 0.58(0.42; 0.73) | |
MPRAGE | プロトコール適合集団 | 0.72(0.57; 0.83)a | 0.70(0.55; 0.82)a | 0.70(0.55; 0.82)a | 0.70(0.55; 0.82)a |
全解析集団 | 0.74(0.61; 0.84)a | 0.73(0.59; 0.83)a | 0.72(0.58; 0.83)a | 0.73(0.59; 0.83)a | |
T1 SE | プロトコール適合集団 | 0.79(0.66; 0.88)a | 0.80(0.66; 0.89)a | 0.79(0.65; 0.88)a | 0.81(0.68; 0.90)a |
全解析集団 | 0.80(0.68; 0.88)a | 0.81(0.68; 0.89)a | 0.80(0.67; 0.89)a | 0.82(0.70; 0.90)a | |
T1 FLASH(2回目) | プロトコール適合集団 | 0.76(0.61; 0.86)a | 0.76(0.62; 0.86)a | 0.75(0.61; 0.85)a | 0.77(0.64; 0.87)a |
全解析集団 | 0.78(0.64; 0.87)a | 0.77(0.64; 0.86)a | 0.76(0.63; 0.86)a | 0.78(0.65; 0.87)a |
数値は,ガドブトロールが“優れる”とされた画像の比率(95%信頼区間)を示す.
a ガドブトロールが優位であることを示す.
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脳腫瘍の造影MRIにおいて,ガドブトロール0.1mmol/kgとガドテリドール0.1mmol/kgの定性的および定量的評価に基づき,両者の比較を行った.その結果,ガドブトロール0.1mmol/kgは良好な造影効果を示すことが確認された.ガドブトロールは,脳腫瘍の診断と治療選択に関し,より豊富な情報を提供すると考えられる.
PP-GAD-JP-0442-20-11