バイエル画像検査室

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CT室 検査

最適な撮影タイミングの取得方法

CTAは、ボーラストラッキング法とテストインジェクション法、どっちがいいと思う?

ボーラストラッキング法やテストインジェクション法は、造影検査の撮影タイミングを計る方法として一般的ですが、テストボーラストラッキング法や希釈造影剤でのテストインジェクション法もありますよね。

最適な撮影タイミングの取得方法

CT装置で造影検査を行う場合、臓器実質などを染める注入法と、血管を描出させる注入法の2種類に大別することができます。今回ご紹介するテストインジェクション法(以下TI法)とボーラストラッキング法(以下BT法)は血管を描出する注入法(CTA:CT Angiography)を用いる際に使用され、対象の血管に造影剤が到達するタイミングを計るために使用されます。

TI法、BT法ともに心臓CTAや血管系CTAで用いられ、CT撮影を開始するタイミングを最適化する手法として用いられています。これらの手法は現在では使用方法が確立され、そのメリットとデメリットを把握し、撮影者が用いる方法を選択できるようになっています。

テストインジェクション(TI)法

本スキャン前に造影剤を少量(10mL程度)注入し、CTで撮影対象血管のTime enhancement curve:TEC(以下TEC)を計測し、造影剤到達時間、最大CT値を予想する注入法です

TI法のメリット

事前に対象血管への造影剤到達時間、ピーク時間、最大CTが予測できるため、本スキャンでの総ヨード量を調整できる。
撮影開始時間が確定できる、それに伴い息止め開始時間や撮影開始ディレイ時間も確定できる。

TI法のデメリット

撮影が2回に分かれる。
使用する造影剤量が本スキャンより少量の為、TECのCT値ピークがずれてしまうため補正が必要となる。
より正確な本スキャン時のTEC予想を行う場合、伝達関数などを用いる計算が必要となる。

ボーラストラッキング(BT)法

本スキャン撮影プロトコルにCT透視機能を併用し、対象血管に近しい血管にRegion of interest(関心領域:以下ROI)を設定し、本スキャン開始前にCT値をリアルタイムでモニタリングします。
ROIのCT値が一定以上に上昇したところで本スキャンを開始する手法です。

BT法のメリット

撮影が1度でよい。
TI法に比べ検査時間が短い。

BT法のデメリット

造影剤注入開始後すぐに透視撮影が始まるため、注入部位の観察が十分にできない、もしくは防護服を着て観察を行わなければならない。
被検者の心機能、心拍出量によってTECのCT値ピーク到達時間が異なるため、最適なタイミングで撮影できない場合がある。
ROIが呼吸や体動で設定した血管からずれた場合、オートスタートができない為、マニュアルスタートが必要となる。

最近ではこれらのデメリット解消の為、TI法とBT法を組み合わせたテストボーラストラッキング法(以下TBT法)や希釈テストインジェクション法(以下希釈TI法)も用いられるようになっています。

テストボーラストラッキング(TBT)法

TI法とBT法を同時に行う方法です。
静脈から投与された造影剤が撮影対象血管に到達する時間は注入毎に一定と考え、TIと本番注入を連続して行い、TIのCT値ピークを本スキャンスタートのディレイ開始トリガーとします。
被検者ごとに異なる造影剤到達時間をTI法で確認し、そのピークをディレイ開始トリガーとすることで、本番注入の造影剤到達時間がTI 後一定となるため、循環動態の異なる被検者間でも安定した撮影ができると考えられています。

TBT法では、1度の造影剤注入と撮影で検査が完了し、CT値ピーク到達時間もある程度予想ができるため、TI法とBT法のメリット双方を生かすことができます。問題点は、撮影プロトコルが少々複雑であり、CTのディレイ時間設定検討、Bolus Trackingでのマニュアルスタートタイミングの見極めなどが考えられます。

注入器の注入プロトコルは図1の通りで、1.2フェーズ目がテスト注入、3フェーズ目に休止時間を入れ、4.5フェーズ目に本番注入プロトコルを設定します。

図1

この条件はTI法に似ていますが、3フェーズ目が5秒間の停止になっており、これはテスト注入と本番注入が連続してしまうとTDC曲線 が分離できない為設けられています。

希釈テストインジェクション(希釈TI)法

TI法で用いる造影剤を、造影剤と生食の混合注入に変え、本スキャン注入と同じ注入時間に設定しTIを行う方法です、被検者の循環動態による影響をより考慮したTI法となります。(図2)

図2

希釈TI法で得られたCT値ピーク到達時間は、本スキャンでも同一になるためピーク到達時間の決定が容易になります。(図3)

図3

また希釈TI法で得られたピークCT値は、希釈倍率を掛けることで原液造影を注入した際のCT値を求めることができるため、本スキャンで用いる総ヨード量の増減調整ができ、被検者ごとのCT値のばらつきをある程度そろえることが可能となります。問題点は生理食塩水の使用量が多くなるため、耐圧生食シリンジの容量が必要なこと、TBT法と比べ注入が2度に分かれることが考えられます。

TI法、BT法ともに現在のCTA撮影では多く用いられる手法となっています。これらを発展させ、より良い撮影が行えるよう考慮られた新たな注入法が使用されるようになってきました。


それぞれの注入法はメリットとデメリットが存在します。ご施設にあった注入法を検討してはいかがでしょうか。

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