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IFNフリー治療によるC型肝炎ウイルス排除後の肝細胞癌発生における肝細胞癌根治既往の影響

Impact of previously cured hepatocellular carcinoma (HCC) on new development of HCC after eradication of hepatitis C infection with non-interferon-based treatments. Toyoda H, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2018; 48(6): 664-670.

効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

Point of Article

C 型肝炎ウイルス(HCV)感染症に対する治療法は劇的に進歩し,インターフェロンを使用しない直接型抗ウイルス薬を用いた治療(IFNフリーDAA治療)により,ほとんどの症例でHCVの排除が可能となった.しかし,DAA治療でHCV持続陰性化(SVR)が得られたHCC根治症例におけるHCC再発率が高いとする報告1)もあるほか,DAA治療でSVRを得た場合でのHCCの発生抑制効果については議論が分かれており,DAA治療によるSVR例に対する有用な観察法の確立が課題となっている.

 本研究では,EOB-MRIによる画像診断に基づき,IFNフリー DAA治療によるSVR例のHCC発生について,HCCの根治的治療が施行された症例とHCCの既往がない症例との前向きによる比較検証を行った.その結果,HCCの根治的治療において, DAA治療前にEOB-MRIで検出された非多血性低信号結節(NHHN)の多血化や,根治的治療後の遺残の可能性が考えられる病変の進展によって,SVRが得られた場合でもHCCの発生率が高まる可能性が示された(p<0.0001; ログランク検定).

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    対 象

    2014年9月~2016年5月までに,HCVに対するIFNフリーDAA治療が施行され,SVRが得られた代償性肝硬変患者164例(いずれの症例もDAA治療開始前2週間以内にEOB-MRIを施行)

    試験デザイン 前向き観察研究
    試験方法

    C型代償性肝硬変と診断された症例に対しIFNフリーDAA治療を施行後,SVRを得た164例をHCCの根治的治療歴がある群(62例)とHCCの既往がない群(102例)に分け,SVR後のHCCの発生について両群を比較した.さらに,DAA治療前のEOB-MRIでNHHNの有無を確認し,NHHNの多血化及びHCCの直接的発生(NHHNを介さないHCC発生)について両群間で比較検討した.なお,HCCの根治的治療歴がある群については,HCC治療終了時からDAA治療開始までに1年以上のインターバルでHCCの再発がないことを確認した.

    SVR後の経過観察

    全例に対して,国内ガイドラインに基づき,3~6ヵ月ごとの定期的サーベイランスと6ヵ月ごとの超音波検査を実施した.DAA治療前のEOB-MRIでNHHNを認めた症例については,原則として6ヵ月ごとにEOB-MRIによる多血化の有無を確認した.

    評 価

    評価項目:

    ①SVR例における多血性HCCの発生率

    HCCの根治的治療歴がある群とHCCの既往がない群の間で多血性HCC発生率を比較した.

    ②SVR例におけるNHHNの多血化率

    DAA治療前のEOB-MRIでNHHNを認めた症例を対象に,HCCの根治的治療歴がある群とHCCの既往がない群の間でNHHNの多血化率を比較した.

    ③NHHNが検出されないSVR例の多血性HCCの発生率

    DAA治療前のEOB-MRIでNHHNを認めなかった症例を対象に,HCCの根治的治療歴がある群とHCCの既往がない群の間で多血性HCCの発生率を比較した.

    比較を行った各群間でのパーセンテージによる差はχ2検定で,定量値についてはマン・ホイットニーのU検定により,多血性HCC発生率についてはログランク検定により有意差検定を行い,p<0.05を有意差ありとした.

    ▶EOB-MRIによるNHHNの検出

    放射線科医1名と肝臓専門医2名がそれぞれ盲検下で全画像の読影を行い,EOB-MRIの動脈相と肝細胞造影相でNHHNの有無を判定した.また典型像ではないNHHNを認めた場合には,造影超音波や造影CTを適宜施行し,3名の合意に基づいて判断した.

    対象患者164例全体のほか,HCCの既往のない群(102例)とHCCの根治的治療歴のある群(62例)とに分けた患者背景を表1に示す.男性は77例,女性は87例であり,平均年齢75歳(68-79歳)であった.IFNフリーDAA治療レジメンとして,アスナプレビル+ダクラタスビル(HCVゲノタイプ1型)が85例(51.8%)に,レジパスビル+ソホスブビル(HCVゲノタイプ1型)が48例(29.3%)に,ソホスブビル+リバビリン(HCVゲノタイプ2型)が31例(18.9%)に用いられた.DAA治療前のEOB-MRIにより38例(23.2%)でNHHNが検出されたが,そのうち20例にはHCCの根治的治療歴があり,残りの18例にはHCCの既往がなかった(p=0.0369).NHHNの検出を除き,HCCの根治的治療歴がある群とHCCの既往がない群の間で患者背景因子に有意な差は認められなかった.

     また,HCCの根治的治療歴がある62例はいずれもearly stageのHCC症例(BCLC Stage 0もしくはA)であり,そのうち33例(53.2%)はBCLC Stage 0であった.HCC診断時に画像検査(CTもしくはMRI)で血管浸潤を認めた例はなく,40例(64.5%)は肝切除が施行され,残りの22例はラジオ波焼灼療法(RFA)が施行された.また,この22例のうち10例はRFAと肝動脈化学塞栓療法(TACE)の併用療法であった(表2).

     

    表1. 患者背景

      全体 HCCの既往なし
    (102例)
    HCCの根治的治療歴あり
    (62例)
    p値

    年齢,[四分位範囲],歳

    75[68-79] 74[67-78] 76[71-79] 0.0858

    男/女,[%],例

    77[47.0]/
    87[53.0]
    45[44.1]/
    57[55.9]
    32[51.6]/
    30[48.4]
    0.4202

    血小板数,[四分位範囲],×1000/mL

    94[76-117] 92[75-114] 105[82-132] 0.0970

    AST,[四分位範囲],IU/L

    54[38-77] 51[36-77] 55[44-77] 0.4189

    ALT,[四分位範囲],IU/L

    40[29-62] 41[29-64] 40[30-59] 0.6533

    総ビリルビン,[四分位範囲],mg/dL

    0.8[0.6-1.1] 0.8[0.6-1.0] 0.9[0.6-1.3] 0.1053

    アルブミン,[四分位範囲],g/dL

    3.9[3.6-4.2] 4.0[3.6-4.3] 3.8[3.5-4.2] 0.1205

    FIB-4 index,[四分位範囲]

    6.3[4.7-9.0] 6.3[4.7-8.4] 6.3[4.6-11.1] 0.2281

    α-フェトプロテイン,[四分位範囲],ng/mL

    8.9[4.2-20.7] 9.0[3.6-21.9] 8.9[5.3-20.2] 0.4230

    HCVゲノタイプ 1型/2型,[%],例

    133[81.1]/
    31[18.9]
    80[78.4]/
    22[21.6]
    53[85.5]/
    9[14.5]
    0.3081

    DAA治療レジメン,[%],例

           

     アスナプレビル+ダクラタスビル/
     レジパスビル+ソホスブビル/
     ソホスブビル+リバビリン

    85[51.8]/
    48[29.3]/
    31[18.9]
    46[45.1]/
    34[33.3]/
    22[21.6]
    39[62.9]/
    14[22.6]/
    9[14.5]
    0.0864

    治療前NHHNの検出 なし/あり,[%],例

    126[76.8]/
    38[23.2]
    84[82.4]/
    18[17.6]
    42[67.7]/
    20[32.3]
    0.0369

    マン・ホイットニーのU検定

     

    表2. 根治的治療症例におけるHCCの背景(N=62)

    HCC診断時の年齢,[四分位範囲],歳

    72[67-77]

    BCLC Stage 0/A,[%],例

    33[53.2]/ 29[46.8]

    腫瘍径,[四分位範囲],cm

    1.8[1.4-2.6]

    病変数 単発/多発,[%],個

    54[87.1]/ 8[12.9]

    血管浸潤 なし/あり,[%],例

    62[100]/ 0

    治療 肝切除/RFA/RFA+TACE,[%],例

    40[64.5]/ 12[19.4]/ 10[16.1]

    根治的治療からDAA治療開始までの期間,[四分位範囲],年

    2.6[1.5-5.6]

    DAA治療後の経過観察期間の中央値は13.7ヵ月(四分位範囲:11.0-19.9ヵ月)であり,脱落例はなかった.対象患者164例中30例(18.3%)に多血性HCCの発生を認め,根治的治療歴がある群の方がHCCの既往がない群に比べて発生率が有意に高かった(p<0.0001,図1).

     

    図1. SVR例の多血性HCC発生率(HCC既往の有無別比較)

    SVR例の多血性HCC発生率(HCC既往の有無別比較)

    DAA治療前にEOB-MRIでNHHNが検出された38例のうち,17例(44.7%)でNHHNの多血化が確認された(図2).多血化率は,HCCの根治的治療歴がある群とHCCの既往がない群の間に有意差はなかった(p=0.2128,図3).

     

    図2. DAA治療前に検出されたNHHNの多血化

    DAA治療前に検出されたNHHNの多血化

    DAA治療前に検出されたNHHNは,治療終了後48週の時点で増大ならびに多血化を示す(矢印).

    図3. DAA治療前に検出されたNHHNの多血化率(HCC既往の有無別比較)

    DAA治療前に検出されたNHHNの多血化率(HCC既往の有無別比較

    DAA治療前にEOB-MRIでNHHNが検出されなかった126例のうち,根治的治療歴がある症例は42例であり,そのうちの13例(31.0%)において多血性HCCが検出された.一方,HCCの既往がない84例では多血性HCCが検出された症例は見られなかった.根治的治療歴がある群は,HCCの既往がない群に比べ多血性HCC発生率は有意に高かった(p<0.0001,図4).なお,SVR後のHCC発生症例におけるEOB-MRIの画像所見を示す(図5).

     

    図4. DAA治療前にNHHNが検出されないSVR例の多血性HCC発生率(HCC既往の有無別比較)

    DAA治療前にNHHNが検出されないSVR例の多血性HCC発生率(HCC既往の有無別比較)

    観察期間

     

    図5. NHHNが検出されないSVR例でのHCC発生(HCC根治的治療例)

    DAA治療の3年前(初発のHCCで切除施行)DAA治療開始時 DAA治療終了後48週 DAA治療終了後72週

    DAA治療終了後48週まで,多血性HCC及びNHHNのいずれも検出されず.
    その後,DAA治療終了後72週の時点で多血性HCCを認める(矢印).

    本研究では,SVR後の多血性HCCの発生率において,HCCの根治的治療歴がある群の方がHCCの既往がない群を有意に上回ったが(図1),これは既に報告されている結果と一致する2,3).このようにSVR例ではHCCの既往によって多血性HCCの発生率に差が見られることから,我々はその要因を明らかにするため,EOB-MRIによる画像診断,とくにDAA治療前の肝細胞造影相で検出されるNHHNとSVR後の変化に着目した.NHHNは多血性HCCに進展しやすいことが報告されているが4,5),NHHNが早期の非多血性HCCであるのか,あるいは多血化前の異型結節(dysplastic nodule)であるのかについては未だ議論の分かれるところであり6),現在のEASL/AASLDガイドラインにおいてもNHHNの位置づけは定まっていない.しかし,肝硬変と診断された患者においてNHHNが高率に多血性HCCに進展したとの報告や4,5),同時多発性のNHHNを認めるHCC症例では,それが認められないHCC症例と比べて根治的切除後のHCC再発率の高いことが報告7)されており,本研究ではNHHNをHCCの発生前段階のものと考えた.

     本研究の患者背景をみると,NHHNの検出頻度は,HCCの根治的治療歴がある群がHCCの既往のない群を有意に上回っていた(表1).このことから,根治的治療歴がある群の多血性HCC発生率がより高まった理由の1つとして,根治的治療歴のある群にNHHNを有する症例が多く含まれていたことが考えられる.一方で,SVR後のNHHNの多血化率については両群間に有意差が認められなかったが,このことは,DAAの治療前に検出されるNHHNが,SVR後であっても多血化する性質を潜在的に有し,その性質にHCC既往の有無による差はない可能性を意味する.NHHNの多血化によるHCCの再発は多中心性再発と考えられるため7,8),根治的治療歴があるSVR例での多中心性再発は,HCCの既往のないSVR例でのHCC発生と,頻度において同程度である可能性が示された.

     一方,DAA治療前のEOB-MRIでNHHNが検出されなかった症例では,根治的治療歴がある群における多血性HCCの発生率が24ヵ月の観察期間で30%以上であったのに対し,HCCの既往のない群では観察期間中に1例も多血性HCCの発生を認めなかった.これはHCC根治的治療の症例において,DAA治療前のEOB-MRIでは検出されなかった非常に微小な遺残病変が,観察期間を経てEOB-MRIで検出できるほどに進展した可能性と考えられ,DAA治療前にHCCの根治が確認されたにも関わらず,肝内転移を示唆する結果であった8)

     本研究の結果,IFNフリーDAA治療前にHCCの根治的治療歴のある患者では,DAA治療開始前に画像上HCCが存在しなくても,HCCの既往がない患者よりSVR後の多血性HCC発生率が高いことが確認された(図1).また,HCCの根治的治療歴のある患者の場合,DAA治療前にNHHNの存在頻度が(HCCの既往がない患者より)高いことと(表1),NHHNを介さない多血性HCC発生率が高いこと(図4)(肝内転移を示唆する)が,SVR後の多血性HCCの高い発生率に寄与すると考えられた.そのため,HCCの根治的治療歴のある患者とHCCの既往がない患者は,SVR後の多血性HCC発生リスクやSVR後の経過観察において明確に区別すべきと結論された.

     

    References

    1. Reig M, et al. J Hepatol. 2016; 65: 719-726.
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    5. Komatsu N, et al. Hepatol Res. 2014; 44: 1339-1346.
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