画像診断機器関連情報メールマガジン Vol.22

いつも画像診断機器関連情報メールマガジンをご愛読いただき、ありがとうございます。
今月号では、造影検査での安全対策として、空気注入防止のための情報をご紹介いたします。
MRIトピックスでは、T1強調像用のGRE Sequenceについて、CTトピックスでは注入中に圧力がかかる原因のひとつである、X線造影剤の粘稠度についてご紹介させていただきます。


1.造影検査の基礎:空気注入防止のために

血管内への空気注入は、患者に重篤な傷害や死亡の原因となることがあり、造影検査時に誤って空気が注入される事例も報告されています。この空気注入を防止するために、ご施設でも対策がされている事と思います。

基本的な事として、バイアルの造影剤を専用シリンジに充填する場合は、シリンジの充填や再充填は1人の担当者が行い、手順の途中で他の担当者に交代しない事、交代が避けられない場合は、新しい担当者は必ず気泡除去を確認されていると思います。
シリンジには、空シリンジと造影剤充填済みシリンジを見分けるため、透明度の高いシリンジや、シリンジ内の液体充填を確認できるマーク付きシリンジ(空シリンジでは楕円形に見え、液体が充填されると円形に見える)も活用されています。

マーク付きシリンジの一例

造影剤をシリンジに充填した場合は、すべてのシリンジとディスポーザブル製品は必ず気泡を除去します。造影剤の充填やシリンジの気泡除去の際には、被検者に接続されていない事を確認し、インジェクタヘッドを上向き位置に向けて操作します。
シリンジ内に付着した気泡は除去する事がむずかしいため、気泡が付着しにくい方法として、充填中にシリンジに引き込まれる泡の量や大きさを抑えるため、造影剤充填用チューブが使用されています。このチューブは、直径が太く、長さ25cm以内がよいといわれています。

プレフィルドシリンジの造影剤も、使用用途に応じた使い分けがされていますが、プレフィルドシリンジでも空気注入への注意は必要となります。シリンジやチューブ内のエア抜きだけでなく、注入後にピストンを後退させてしまう事で、準備がされた造影剤と誤って使用してしまうリスクも伴い注意が必要です。

血管内造影では、インジェクタだけでなく手押しで造影剤が注入される事があり、手押しの造影検査は、注入毎にシリンジへ造影剤充填とエア抜きがされることもあります。
インジェクタにも、手押し感覚で注入できる機能もあります。あらかじめインジェクタに準備した造影剤を、ハンドコントローラーで速度を変化させた注入ができる機能です。ハンドコントローラーを使用することで、注入毎に造影剤をシリンジに充填やエア抜きする作業を省略できるため、空気注入防止に一翼を担うのではないでしょうか。

速度変化ができるインジェクタのハンドコントローラー
速度変化ができるインジェクタの
ハンドコントロ

2.MRIトピックス:GRE Sequence(T1強調像用)

現在、臨床応用されているGRE(Gradient Echo)シーケンスは多数あります。それらGREシーケンスは各々目的を持って開発されています。その目的(用途)にあった撮像パラメータを設定しなければ、得たい画像コントラストと異なった画像になってしまいます。
臨床応用においては、用いるGREシーケンスの特徴を理解したうえで、多様な画像コントラスト(本来の設計目的とはちょっと違う)を得ることがあります。今回は、T1強調画像をより有効に撮像するために開発された、コヒーレント型GREシーケンスについて考えてみます。

コヒーレント型GREシーケンスといえば、Haaseらが報告したFLASH(Fast Low Angle Shot)が代表格ではないでしょうか1)。基本的にFLASHと同様の目的で設計されたGREシーケンスは他にも多数あり、SPGR, T1-FFE, Fast FE, SARGEなど装置メーカーにより異なる名称が付いています。これらのGREシーケンスを基に用途別に進化・発展し多くの名称(Turbo-FLASH, MP-RAGE, VIBE, LAVA, THRIVE, TIGRE等々)で呼ばれていますが、原点は「T1強調像を短時間に撮像する」ことではないでしょうか。

GRE法ではSE法に比べ、極端に短いTE,TRを設定し小さなFA(Flip Angle)にて信号を取り出すことになります。極端に短いTRのもとでは、この3つのパラメータの組み合わせでT1強調像を有効に撮像することは難しく、アーチファクト(FLASH band)も発生してしまいます。
コントラストの面から考えた場合、理由の一つとしてX-Y面に展開した磁化がそのまま残り、次以降の信号収集時に残留磁化としてコントラストに影響します。X-Y面の残留磁化はT2値が長いものになりますから、T1強調像を得る目的としては消し去りたい信号にとなります。
そこで考え出されたのがスポイラーです(図1)。信号読み取り後に残留磁化をスポイル(消去)してから、α°パルスで励起して縦磁化をきれいな(残留磁化の無い)X-Y面に展開して信号収集することで解決しました。

MRIトピックス:GRE Sequence(T1強調像用)図1
図1

スポイラーには2種類あり、傾斜磁場(Gradient Spoil)を用いるものとRFを用いるものがあります。現在どちらも選択できるMRI装置もありますが、RF Spoilingを用いて撮像されるのが一般的のようです。

このように改良を加えることで、極端に短いTRの環境下でも有効にT1強調像が撮像できるようになりました。しかし、MRIでは撮像パラメータを変更することで多様なコントラストを得ることができます。極端に短いTE,TRを設定し小さなFA(Flip Angle)を用いて有効なT1強調像を撮像するために設計されたGREシーケンスにおいても同様です。
図2では2D FLASHを用いて、TE=10 msec固定としTRとFAを変化させています。右上の4つぐらいが本シーケンスの設計目的を反映しているコントラストと云えるのではないでしょうか。3D撮像なら更に短いTRを設定するためFAはもっと小さくなります(例:TE/TR=1/3 msec, FA=10 deg)。

MRIトピックス:GRE Sequence(T1強調像用)図2
図2

左下に向かうほどT2*強調像になっていきます。普段、臨床で撮像されるT2*強調像の多くは、T1強調像を有効に撮像できるように設計されたシーケンスを用いて、撮像パラメータを変更することにより得られています。

参考文献

1)
Haase, A., et al. : FLASH imaging ; Rapid NMR imaging using low filip-angle pulses. JMR., 67, 258-266, 1986.

3. CTトピックス:造影剤粘稠度の注入圧力への影響

水溶性造影剤の重要な物理化学的性質は主に、溶液の粘稠度(ねんちゅうど)と溶液の浸透圧があります。粘稠度は、粘度計を用いて測定され、通常、水を「1」とした時の比粘度として表されることが多く、「mPa・s(ミリパスカル・秒)」または「cP(センチポワズ)」で表記される場合もあります。
粘稠度は、溶液の温度の上昇に伴って低下することから、通常、測定時の液温が併記されます。
一般に、液体は温度が上がると粘稠度は下がるので、注入前に加温するとよいとされています。

【粘稠度が高くなる要因】

造影剤の成分濃度が高い場合
造影剤の主成分の分子量が大きい場合
メグルミン塩などの割合が多い場合
ある粒子の形が球形からずれるほど、分子の大きさとは関係なく溶液の粘稠度は高くなる
液体温度の低下

シリンジイラスト

【臨床における粘稠度の関わり】

造影剤投与時の操作性や急速注入時の造影能に影響します。

操作性

  • 翼状針や穿刺部位での反跳による血管損傷などのトラブル(急速静注法)
  • チューブ接合部のはずれや、造影剤の漏れなどが発生する可能性
  • 点滴注入や細いカテーテルを用いての注入が困難

造影能

  • 径の細いカテーテルや穿刺針において、粘稠度の高い造影剤を投与した場合には、シリンジやカテーテルを保護するための圧力リミットにかかり、造影剤注入速度が低下し造影能が低下する可能性

シリンジやカテーテルには制限圧力があり、インジェクタには、シリンジやカテーテルを注入圧力による破損から保護するための圧力リミットが設定できます。注入速度を担保するためにも、圧力リミット内で注入することが必要となってきます。

編集後記

最後までお読みいただきありがとうございます。
今年も半分を過ぎ、月日の流れの早さを感じております。2016年のメルマガも、残すところ2回となりましたが、今後もご存知だけれど忘れていた基本的情報を配信できるよう、努めてまいります。
ご要望やお気づきの点がございましたら、ご連絡頂ければ幸いでございます。
次回は2016年9月の配信を予定しています。今後ともご愛読よろしくお願いいたします。

L.JP.MKT.RI.06.2016.1102