画像診断機器関連情報メールマガジン Vol.21

平素より画像診断機器関連情報メールマガジンをご利用いただき誠にありがとうございます。
また4月15日から17日に開催されました国際医用画像総合展でブースにお越しくださいました皆様、お忙しい中ありがとうございました、今後も新しい製品情報をご紹介できるよう努めて参ります。

さて今号では冠動脈CTA検査の際、インジェクターを使用するときの気を付けるポイントについて、MRIトピックスではGRE法で使用されるIn phaseとOpposed phaseについて、CTトピックスではCT装置とインジェクターの連動についてご紹介いたします。


1. 造影検査の基礎:冠動脈CTA検査でのインジェクターの役割

冠動脈CTA検査では他の多くの造影検査とは異なり、生理食塩水での後押しや、高速注入が必須となります。
今回は冠動脈CTA検査の注意点を、インジェクター使用の観点からご紹介いたします。

穿刺部位と針の選択は?

右腕の太い血管(尺側皮静脈、橈骨皮静脈)へ20Gの留置針の使用を推奨します。

左腕からの造影剤注入は左鎖骨下静脈での造影剤滞留によるアーチファクトと、内頸静脈への造影剤逆流による心臓への造影剤到達遅延が発生するためです。

また20Gより細い留置針の場合、冠動脈CTA検査での高速注入をインジェクターでおこなうと、注入圧が上昇し、他の条件(造影剤濃度、造影剤の加温、ルートの長さなど)にもよりますが、圧力リミットにかかる恐れがあります。

穿刺部位と針の選択は?

造影剤は加温すべきか?

造影剤の粘稠度は加温することで下がり、インジェクターにとっては注入圧が下がります。

また冠動脈CTAで使用される高濃度製剤は、腹部造影などで多く用いられる300mgI製剤に比べ粘稠度がおおよそ2倍程度あります。

このため、300mgI製剤を用いた腹部造影検査と、高濃度製剤を用いた冠動脈CTA検査では、同じ注入速度でも粘稠度が異なるため、高濃度製剤は特に加温することをお勧めいたします。

粘稠度と濃度の関係(イオパミロン® イオパミロン®300、370)

生理食塩水での後押し設定は?

生理食塩水で造影剤を後押しする意義は、穿刺部から心臓へ造影剤を押し込むことです。
後押しをしない造影剤のみの注入の場合、造影剤注入完了と共に、心臓へ戻る静脈の血流速度に戻ってしまいます。
これでは冠動脈CTA検査の為に高速注入した造影剤が、穿刺部から心臓までに残っている分は心臓へ高速で届きません。

よって撮影の為に必要なCT値ピークが下がり、なだらかなTDCになってしまいます。
そのため冠動脈CTAでは、注入した造影剤を無駄なく心臓へ送り込むため、穿刺部から静脈内に滞留した造影剤を生食で後押ししてあげることが必要となります。

この時の滞留量は体格によって異なると言われていますが、20-30mL程度といわれています。
最近の冠動脈CTA検査用注入プロトコルは造影剤注入量も少なく、体重で注入量を管理することが多いため、確実に後押しを行う為にも余裕を持った後押し量を設定してみてはいかがでしょうか。

入院患者様の検査を行うため、病棟でルートをとってきた、大丈夫か?

インジェクターを用いた注入を行う際、使用するルートは造影用耐圧ルートを使用しなければなりません。
これは普通の輸液用ルートとは違い、ロック式でルートが固く、早い速度で注入を行ってもそれに耐えることができる構造になっています。

一般的な輸液ルートはスリップ式で耐圧性能がないため、高速注入を行った場合、接続部が外れたり、ルートが破裂する危険性があります。

高速注入にかかわらず、インジェクターを使用するルートは必ず耐圧性能を持ったルートを使用することが必要です。

三方活栓付きのルートを接続する場合、インジェクターのルートは何処に接続するか?

三方活栓を使用する場合、側管側にインジェクターのルートを接続すると90°に液体の流れが変化する為、ここで無駄な圧力が発生してしまいます。

そのため、インジェクターのルートは側管側ではなく、液体の流れがまっすぐになる側へ接続することをお勧めいたします。

三方活栓との接続図
三方活栓との接続図

2. MRIトピックス:In phaseとOpposed phase

一般的に臨床で用いられているMRIは、人体のもっとも多い成分である水素(プロトン,H1)の共鳴周波数に合わせて撮像しています。この共鳴周波数は磁場強度によって異なります。

プロトン(H1)は水や脂肪に多く含まれている元素になります。何かの工夫をしなければ水だけの信号が欲しくても、脂肪の信号が一緒に得られることになります。
いわゆるケミカルシフトアーチファクトと呼ばれる現象は、この水と脂肪の共鳴周波数がわずかに異なること(3.5ppm)が原因です。

プロトン(H1)における磁場強度別の共鳴周波数および水と脂肪の周波数差を示します(1.5Tを基準に切の良い数字に整理しました)。

磁場強度別の共鳴周波数および水と脂肪の周波数差

使用しているMRI装置の共鳴周波数を知れば、GRE法におけるTE選択の参考になりますので、一度確認されることをお勧めします。

さて、GRE法ではこの水と脂肪の周波数差を異なるTEで撮像して、In phaseとOpposed phase(あるいはOut of phase)の画像を得ることがあります。特に上腹部の検査では脂肪の存在を確認するために用いられています。
もちろん、しっかりと脂肪抑制したい場合は各種オプションパルス(Chess、Binominal、SPIR、SPAIR、DIXON、水の選択励起など)を用います。多くの場合、GRE法では異なるTEにより水と脂肪の信号を意図的にIn phase(同位相)とOpposed phase(逆位相)の画像を得ますが、その時起こっている水と脂肪の位相を示します(1.5Tの場合。1/224Hzで計算)。

位相差

こうして位相差を図で確認すると、In phase(同位相)とOpposed phase(逆位相)ということが判ります。何気に使うIn phaseとOut of phase(同位相ではない。同位相から外れている。)の組み合わせでは間違ってはいないが、正しく伝わっていないかもしれません。
In-Outと云いがちですが、逆位相のTEを示す場合にはOpposed phaseが適しているでしょう。

3. CTトピックス:CT装置とインジェクターの連動、CAN規格とは

CT装置とインジェクターを更新する際、装置とインジェクターを連動させたいという要望をよくお聞きします。
しかしこの連動は異なるメーカー同士の機器をお互いが制御して動かすために、メーカー間で情報をやり取りしなければなりません。

そこで連動には多くの場合データ転送の規格の一種であるCAN(1Controller Area Network)規格を用いてお互いに通信を行っています。
このCAN規格はドイツのボッシュ社が提唱しその後ISOでも標準化されたもので、自動車や大型工作機械などの分野でも使用されています。

CTとの装置連動では、連動できる機能ごとにクラス分類がされており、現在クラス0から5まで分類されます、また上位クラスは下位クラスの機能をすべて含んだものとなります。

クラス0 -スキャナがインジェクターの「状態」をモニタできる
クラス1 -インターフェースの作動(各装置は他の装置の開始を要求できる)
クラス2 -インジェクターは注入サマリーデータをスキャナに提供できる
クラス3 -スキャナはインジェクターから注入プロトコル設定を読み込むことができる
クラス4 -スキャナはインジェクターに注入プロトコルを書き込むことができる
クラス5 -スキャナは注入の注入速度をリアルタイムで制御できる

当初CTとインジェクターの連動はクラス1での制御でしたが、現在は多くのメーカーがクラス4に対応した連動機能を有してきています。

このクラス4ではCTの操作パネル上にインジェクターの注入プロトコルを表示させることができ、そこで注入条件の作成やCT撮影プロトコルに連動した注入プロトコルの保存・自動呼び出しが可能となり、インジェクターの多くの操作をCT操作パネルで完結することが可能となります。

連動機能とよくよばれますが、この連動を制御している通信規格が自動車などと同様な物だったことご存知でしたでしょうか。

インジェクター側にあるCTとの接続ボックス
インジェクター側にあるCTとの接続ボックス

編集後記

いかがでしたでしょうか、冠動脈CTA検査はCT造影検査のなかでも注入速度が速くなる検査法のため、しっかりとした安全対策確認が重要となります。
またMRI、CTトピックスでは、普段何気なく使っている言葉でも、本質を理解せずに使用している場合があります。そんな意外なトピックスを知っていただけるよう、今後も新しいネタをご提供していきます。

次回の配信は2016年7月を予定しております、今後ともご愛読よろしくお願い致します。

L.JP.MKT.RI.04.2016.1060