第32回 (文法・表記編9)
修飾句を使うときのポイント

第29回では、副詞の使い方を説明しましたが、今回は修飾句(modifier)の使い方をご紹介します。副詞や形容詞はrandomlyやsignificantlyなどのように1語で文章や動詞、名詞を修飾しますが、修飾句は、前置詞+名詞など、複数の語をひとまとまりとして、修飾語として使う用法です。ここでは、この修飾句を使う上で迷いがちなところや、誤りやすい点についてご説明します。


修飾句を置く場所

例えば、ある症状をもつ患者のことを英語で表現するときに、「patient with ○○」という表現は皆様もよくなされると思います。このwith以下の部分は、patientのすぐ後に置くパターンはよく知られていますが、この他の場所に置くことはできるのでしょうか? 例えば、以下の例には問題はないでしょうか?

  1. A patient with pain in the neck and shoulder...
  2. A patient presented with pain in the left shoulder...
  3. An elderly patient enters the hospital with abdominal pain...
  4. The patient returns to the emergency department 2 days later with severe leg pain...
  5. The patient was referred to an old physician with swelling in neck.

このうち、1から4は問題ありません。それぞれpatientとwith ... painの間に様々な言葉が挟まっていますが、いずれもpainを持っているのがpatientであることに疑問の余地はありません。4番は「2日後、患者は脚の痛みを訴えて救急診療部に再来院した」という意味ですが、withを離して使うことで、「患者は再来院した」→「その患者は脚の痛みを持っていた」という順番で情報が提供され、「患者は(今度は)脚の痛みを訴えて再来院した」という意味が含意されます。

一方で、5番は良くない例とされています。何が良くないのでしょうか? "The patient was referred to an old physician with swelling in neck." という文章では、with swellingという部分が、patientとold physicianのどちらに掛かるのが曖昧です。というより、これを読んだ大半の読者は、「首に腫れ物のある老医師」と解釈するでしょう。したがって、この場合は "The patient with swelling in neck was referred to an old physician." という語順にする必要があります。

このように、with以下の修飾句の配置には、文法的な制限はありませんが、情報としてみた場合に誤解を生まないような位置に置くということに注意を払う必要があります。

主語を省略できる修飾句

修飾句の中には、動詞の変化形である現在分詞(いわゆる進行形)や、過去分詞を使うものも多くあります。例えば、以下のような文章は皆様にもおなじみではないかと思います。

  • Based on current evidence, Coronary angiography is recommended in patients with stable angina.
  • Renal anemia is a complication frequently occurring in patients on dialysis.

動詞の分詞を使用した修飾句は、もともと2つの文章をつなげて、主となる文章(主節)を修飾するために変形されたものです。上記の例は、それぞれ以下のような文章でした。

  • Coronary angiography is recommended in patients with stable angina.
    The recommendation is based on current evidence,
  • Renal anemia is a complication. Renal anemia frequently occurs in patients on dialysis.

文章中の橙字で示した部分が1つにまとめられて、文章がひとつにつながっているのがわかります。

これらの修飾句を使うときに注意すべきポイントは、この橙字の部分が確かに一致しているかどうかと、現在分詞と過去分詞のいずれを使うべきかということです。
では、次の文章は正しいでしょうか?

  1. Hormonal therapy was performed before receiving radiation therapy.
  2. Treating appropriately, the patient recovered and was discharged from our hospital.

これらをそのまま分解すると、次のようになります。

  1. ?? received radiation therapy. Before this therapy, hormonal therapy was performed.
  2. The patient treated appropriately. The patient recovered and was discharged from our hospital.

いずれもおかしい文章となってしまいます。1番は、2つの分割された文章に共通する部分が見つからず、receiveの主語に相当するものがありません。また、2番はもともとtreatingという進行形だったため、patientがtreatするという能動態の文章に分解され、意味的におかしくなってしまいます。したがって、まず分解された文章は次のようでなくてはなりません。

  1. Radiation therapy was performed. Before this therapy, hormonal therapy was performed.
  2. The patient was treated appropriately. The patient recovered and was discharged from our hospital.

そして、修飾句を用いた文章は以下のとおりとなります。

  1. Hormonal therapy was performed before radiation therapy.
  2. Treated appropriately, the patient recovered and was discharged from our hospital.

1番は動詞の分詞を用いず、単にbeforeで時系列を表現すれば十分です。また、2番ではpatientは治療される側ですので、treatedでつなぎます。

これらの表現の背景を理解することは、英語の構造を理解する上でも非常に有益です。効果的に使えば文章の構造を明確にし、文字数も減らせますので、ぜひ効果的に使用していただければと思います。