血管疾患(慢性動脈閉塞症/大動脈解離/大動脈瘤)におけるガドビスト造影MRAの有用性

浜松医科大学医学部附属病院 放射線部
(現 名古屋大学大学院医学系研究科新規低侵襲画像診断法基盤開発研究寄付講座)
竹原 康雄 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、警告、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、
添付文書  をご参照ください。

症例1:慢性動脈閉塞症

はじめに

本症例は,下肢動脈閉塞が慢性に経過する慢性動脈閉塞症である.下肢動脈閉塞では,吻合可能なレベルの動脈に病変があればバイパス手術も考慮されるが,さらに末梢レベルの多発閉塞や狭窄では薬物治療が選択される.そのため,治療に際しては腹部~下肢動脈における閉塞レベルと範囲を正確に知る必要がある.
また,慢性の下肢動脈閉塞では頻回のフォローアップが必要となるため,当院では電離放射線被曝がなく,腎機能への負担が少ない造影MR Angiography(MRA)が定期検査として選択されている.

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

使用装置と造影剤の投与方法

使用装置と造影剤の投与方法

症例背景とMRA検査の目的

60歳代,女性.上下肢の冷感を主訴とする慢性の下肢動脈閉塞で,外科的な吻合術は行わず,長期にわたり薬物治療を受けている.下肢の循環障害のフォローアップを目的に,造影MRA検査が施行された.

図.大腿部及び下腿部の造影MRA(a:1時相,b~f:7時相)

ガドビスト造影MRIの有用性

下腿の造影MRAでは,動脈閉塞・狭窄の度合いに左右で差がある場合,至適撮像タイミングの取り方が難しいうえに側副血行路の描出も必要であるため,多時相撮像が必須である.多時相MRAでは,至適なMRAが左右の下肢で得られ,さらにある程度の血行動態の把握や静脈の弁別も可能である.
ガドビスト造影MRAは,側副血行路の描出に優れている印象がある.本症例のように,末梢下腿動脈の慢性閉塞症で下肢造影MRA による継続的なフォローアップを必要とする症例では,末梢血管の描出能が優れており,電離放射線被曝がなく腎毒性のリスクが低い,ガドビスト造影MRAが適していると思われる.

症例2:大動脈解離(内膜非破綻型解離)

はじめに

血栓閉鎖型の大動脈解離は内膜非破綻型解離とも呼ばれ,はっきりした偽腔が描出されない.しかし,ulcer like projection(ULP)から解離が進展することがあるため,画像検査によるULPの同定が重要である.

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

使用装置と造影剤の投与方法

使用装置と造影剤の投与方法

症例背景とMRA検査の目的

50歳代,女性.Stanford B型解離後のULP増大の有無を確認する目的で,造影MRA検査が施行された.

図.大動脈の造影MRA及び造影CTA

ガドビスト造影MRIの有用性

患者が小柄な女性の場合,大視野(48cm FOV)で躯幹部のほぼ全身を関心領域とすることができる.また,腹部のダイナミック スタディを施行することで,息止めが持続する限り多時相の造影MRAが得られ,至適造影タイミングや血行動態に関する情報が得られる.
本症例では,発症後数ヵ月にわたり比較的頻繁な画像検査が必要であった.しかし,CT Angiography(CTA)は,電離放射線被曝や(腎機能低下症例では使用に注意を要する)ヨード系造影剤の使用が懸念され,大動脈解離発症後のフォローアップは造影 MRA が推奨される領域である.

症例3:腹部大動脈瘤/両側総腸骨動脈瘤

はじめに

動脈瘤の短径が55mmを超える場合には破裂の危険性が高く,直達手術による graft 置換術が適応になるか,あるいは,本症例のように高齢の場合には endovascular aortic repair(EVAR) が適応になる可能性がある.
いずれの場合でも,術前の情報として,大動脈の蛇行の状態,neckの長さ,血管壁の不整の有無,分枝動脈の分岐位置及びその開存性が問題となり,造影 CT Angiography(CTA )あるいは造影MRAが必要になる.

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

使用装置と造影剤の投与方法

症例背景とMRA検査の目的

80歳代,男性.腎動脈分岐下の腹部大動脈瘤ならびに両側総腸骨動脈瘤の症例.高齢のためEVAR が選択された.

図1.下行大動脈~総腸骨動脈の造影MRA(MIP画像)

図2.腹腔動脈分岐部の造影MRA及び造影CTA

ガドビスト造影MRIの有用性

EVAR術後はエンドリークの出現に注意を要する.そのため,本報で紹介した他の症例同様,何時相も繰り返して撮像可能な MRA の利点が注目される領域である.
本症例では,腹部大動脈瘤・両側総腸骨動脈瘤に加え,臓器動脈の描出が良好で,EVAR術前の腎動脈分岐部や下腸間膜動脈分岐部の確認も容易であった.さらに,正中弓状靭帯による腹腔動脈起始部の圧迫とその狭窄後拡張も偶然描出されており,腹部~総腸骨動脈瘤と併せて診断が可能であった.このことは,ガドビストの分枝動脈の造影効果を反映している可能性がある.

使用上の注意

4.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので,患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.

L.JP.COM.RI.07.2016.1133