心疾患の診断におけるガドビスト造影MRIの有用性

九州大学大学院医学研究院 分子イメージング・診断学講座
(現 東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座)
長尾 充展 先生
九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野
山崎 誘三 先生
九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野
本田 浩 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、警告、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、
添付文書  をご参照ください。

はじめに

本報では,ガドビスト造影MRIが有用であった症例として,部分肺静脈還流異常と労作性狭心症の症例をそれぞれ取り上げる.
4本ある肺静脈は,本来左房へ還流するはずであるが,その一部が右心房や上大静脈に還流する異常をきたすことがあり,これを部分肺静脈還流異常と称する.異常還流する肺静脈の本数や部位は診断や治療方針を左右するため,それらを把握しておくことは治療上有用である.
一方,労作性狭心症は,運動などの労作を誘因とする狭心痛を伴う可逆的な心筋虚血である.動脈硬化などに起因する器質的冠動脈狭窄が主な原因とされ,労作時の心筋の酸素消費量増大に対して十分な血流が確保できず,心筋が低酸素状態に陥ることで虚血発作が出現する.

ガドビストを用いたMRI検査の方法

手順と撮像 Sequence Parameter

手順と撮像 Sequence Parameter

使用装置と造影剤の投与方法

使用装置と造影剤の投与方法

症例1:部分肺静脈還流異常

症例背景とMRI検査の目的

30歳代.女性.労作時の息切れを主訴に来院.胸部単純写真で上大静脈の拡張と肺門部血管影の拡大があり,心エコーでは右房・右室の拡張がみられ,明らかな心内奇形は認めなかった.部分肺静脈還流異常や静脈洞型心房中隔欠損が疑われ,心臓MRIが施行された.

図1.Whole heart coronary MRA(水平断像)図2.Whole heart coronary MRA(冠状断像)

図3.Whole heart coronary MRA(矢状断像)

画像所見

ガドビスト静注後の3D MRA画像では,上大静脈に還流する右肺静脈上葉枝(図1,2),中葉枝と下葉枝(図1,2,3,)が同定され,部分肺静脈還流異常と診断された.同時に,心房中隔欠損などの心内奇形が無いことも確認できた.

症例1におけるガドビスト造影MRIの有用性

本症例では,ガドビスト造影MRIにより右肺静脈の上大静脈への還流が明らかとなり,確定診断に至った.この情報は,外科手術の際に有用であった.
ガドビストによる造影MRIは,心大血管内腔のコントラストが高く,structural heart diseaseの構造・形態的異常を正確に評価することができる.特に若年者の多い先天性心疾患では,被ばくを気にせず診断や治療方針の決定,術後の経過観察に利用できるため,画像検査として臨床的意義が高いものと考える.

症例2:労作性狭心症

症例背景とMRI検査の目的

60歳代.女性.労作時胸痛を主訴に来院,心電図でST低下を認め,虚血性心疾患や心筋症が疑われた.過去に造影CT検査でヨード造影剤によるアレルギー反応の既往があり,心臓MRIで冠動脈狭窄や心筋線維化の有無を評価することとなった.

図1.Whole heart coronary MRA(Volume rendering画像)

図2.Whole heart coronary MRA(Curved MPR画像)

症例2におけるガドビスト造影MRIの有用性

呼吸同期・心電図同期coronary MRAは,非造影の場合には冠動脈遠位部や分枝の信号が弱く,狭窄の評価に限界があった.ガドビスト造影MRIでは冠動脈内のT1短縮効果が持続するため,撮影時間の短縮とともに冠動脈末梢の狭窄の評価が可能となる.遅延造影MRIを撮影する前にcoronary MRAを撮影することができれば,検査時間全体の短縮にも繋がり,冠動脈狭窄と心筋線維化を効率よく評価することができる.

使用上の注意

5.
妊婦,産婦,授乳婦等への投与
(1)
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.詳細は最終DI頁をご参照ください.
(2)
投与後24時間は授乳を避けさせること.[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている.]

L.JP.COM.RI.05.2016.1078