多発性硬化症における炎症性病変の診断と造影MRIの有用性

Hospital universitari Vall d'Hebron, Barcelona, Spain
Dr. Àlex Rovira

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、警告、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、
添付文書  をご参照ください。

はじめに

年齢・性別

47歳 女性

患者背景

30年間にわたり再発性多発性硬化症を有し, glatiramer acetateによる免疫調節療法にて加療中.左半身運動麻痺の急性発作が生じ入院.入院時は左不全片麻痺を伴い,EDSS*は 7(以前のEDSS は4)であった.過去のMR画像と比較し,右側頭葉に新たな限局性病変を認めたため,その鑑別目的で造影MRIを施行した.
*総合障害度評価尺度(expanded disability status scale,EDSS).

確定診断名

腫瘤性脱髄性病変(tumefactive demyelinating lesion,TDL)

確定診断名

MR画像所見

右側頭葉後方の皮質下白質に,広範な浮腫と軽度な圧迫所見を伴う境界明瞭な限局性病変を認める(図1).TDLの可能性が高いが,悪性腫瘍も完全には排除できない.造影T1強調画像では,辺縁不整で中心壊死を示すリング状増強を示す病変を認める(図3).造影T1強調画像において,TDLはハイグレード神経膠腫や転移性脳腫瘍に類似した所見を呈するため,それらとの鑑別が必要である.DSC MR Perfusion画像では,病変部の増強領域におけるrCBV(局所脳血液量)の増加を認めず,TDLと診断した(図4).

経過

メチルプレドニゾロンの静脈内投与を5日間行ったが,臨床的改善は得られなかった.血漿交換を5サイクル行った結果,臨床症状は徐々に改善した.治療後1ヵ月に経過観察目的でMRIを施行し,病変の縮小及び病変周囲の浮腫の消失が確認され,TDLの診断が裏付けられた(図5).

本症例における造影MRIの有用性

TDLは,鑑別診断が難しい病変である.発症の急性期には,辺縁増強,病変周囲の浮腫,圧迫所見がみられることが多く,ハイグレード神経膠腫(膠芽腫)の典型的な画像所見に類似している.この場合,DSC MR Perfusion法によるrCBV解析に基づき,活動性TDLとハイグレード神経膠腫を鑑別することができる.DSC MR Perfusion法は,TDLを腫瘍性病変又は感染性病変と鑑別するのに有用であり, 不必要な侵襲的治療を回避することができる.

撮像パラメータとガドビスト®の注入条件

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使用上の注意

5.
妊婦,産婦,授乳婦等への投与
(1)
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること. [ラット及びウサギの胚・胎児発生に関する試験において、母動物に重度の全身毒性を発現する用量(10mmol/kg)を反復静脈内投与した場合に、ラットでは胎児に軽度な骨変異の増加が、ウサギでは流産及び早産の軽度増加、胎児に軽度な骨変異の増加が観察された.健康成人での曝露量(Cmax及びAUC)と比較した安全域は、ラットで5.3及び2.6、ウサギで7.1及び7.5であった.また、サルの胚・胎児発生に関する試験において、2.5mmol/kg(通常臨床用量の25倍)を投与した場合に流産の増加傾向が観察された.]
(2)
投与後24 時間は授乳を避けさせること.
[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている.]