大腸癌肝転移の診断と治療におけるEOB・プリモビスト造影MRIの有用性

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
肝胆膵外科 枝元 良広 先生
下部消化管外科 矢野 秀朗 先生
放射線診断科  田嶋 強 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

大腸癌肝転移の治療方針

大腸癌における予後規定因子として,肝,肺,リンパ節転移,腹膜播種等が広く認識されている.なかでも肝転移は,そのコントロールにより予後の改善を認めることから重要である1). 同時性肝転移だけでなく,原発巣根治切除後においても原発巣の手術術式に関わらずStageの進行に伴い異時性肝転移再発は増加する(図).大腸癌治療ガイドラインの大腸癌肝転移に対する治療方法は,根治切除可能であれば肝切除を推奨しており2),根治切除後5年生存率は30-50%台と報告されている3)
当施設における大腸癌肝転移の治療選択は,Child-Pugh分類,肝障害度,ICG検査,肝アシアロシンチ,EOB-MRIにおけるIRLS(Intensity ratio of liver to spinal cord)を判断基準として,全例肝切除を施行している4).また,進行・再発大腸癌に対する抗癌剤治療(分子標的薬を含む)は,2000年以降劇的な生存期間の延長が認められる.初回肝切除不能例の抗癌剤治療による肝切除コンバート率は30%で,肝切除後5年生存率は30%台との報告もあり3),当施設においても抗癌剤治療後の肝切除を積極的に行っている.大腸癌肝転移に対する計画的術前抗癌剤治療に関しては,現在様々な臨床試験が行われている.抗癌剤治療に伴う全身状態,肝予備能の低下,病変の縮小に伴う切除部位の確認が困難になることを考慮し,肝切除を先行し,肝切除後4-6コースの術後抗癌剤治療を基本としている.

大腸癌根治切除(CurA)後の異時性肝転移再発(自施設大腸外科1758例/1995-2014年)

大腸癌根治切除(CurA)後の異時性肝転移再発(自施設大腸外科1758例/1995-2014年)

(参考文献)

  1. Scheele J, Altendorf-Hofmann A. Langenbecks Arch Surg. 1999;384(4):313-327.
  2. 大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年度版 大腸癌研究会編 金原出版 2014.
  3. Abdalla EK, et al. Ann Surg Oncol. 2006;13(10):1271-1280.
  4. Kumazawa K, et al. Hepatol Res. 2012;42(11):1081-1088.

大腸癌肝転移診断におけるEOB・プリモビスト造影MRIの有用性

外科医の立場から大腸癌肝転移の根治的肝切除を目的として,偽陽性が少なく高感度で,正確な結節個数と腫瘍径の描出,存在部位診断が可能な診断方法が求められている5).大腸癌肝転移診断におけるEOB-MRI/SPIO-MRI/造影CT/造影超音波による結節診断能の比較では,Az値,感度,陽性適中率ともにEOB-MRIが最も高く,10mm以下の小結節診断においても唯一検出感度の低下を認めていない6).Sofueらは,造影CT単独と造影CTにEOB-MRIを追加した大腸癌肝転移診断の比較試験を行い,EOB-MRI追加群の検出感度が有意に高く,約1/3の症例において肝切除領域の増加などの手術術式が変更されたと報告している7). また,2013年度版画像診断ガイドラインでは,肝転移の診断に有用な画像検査として,ダイナミックMRI (EOB)をグレードAとして推奨している8)
近年では,進行・再発大腸癌に対する抗癌剤治療の有用性から,大腸癌肝転移に対する計画的術前抗癌剤治療や,切除不能症例からのコンバート症例も多く,抗癌剤治療に伴う肝臓への高度な脂肪沈着や,類洞閉塞症候群などが認められる.造影CTは高度な脂肪沈着を生じた肝臓での肝転移診断能が低下するが,EOB-MRIは検出率が有意に高く,かつ10mm以下の結節でも検出率の低下をほとんど認めていない9).また,抗癌剤治療に伴う類洞閉塞症候群の診断能にも優れており10),術前抗癌剤治療を施行した大腸癌肝転移症例におけるPET-CT/FDG-PET/造影CTと比較したメタアナリシスでも,EOB-MRIの有用性が報告されている11).手術,抗癌剤治療を組み合わせた集学的治療は,大腸癌肝転移に対して標準的ともいえる治療方法であり,背景肝の変化は多様である.背景肝に左右されない高い肝転移診断能を有するEOB-MRIは,大腸癌肝転移診断において非常に有用な検査方法である.

(参考文献)

  1. Lafaro KJ, et al. Int J Hepatol. 2013;572307.
  2. Muhi A, et al. JMRI 2011;34(2):326-335.
  3. Sofue K, et al. Eur Radiol. 2014;24(10):2532-2539.
  4. 画像診断ガイドライン 2013年度版 日本医学放射線学会 日本放射線科専門医会・医会編 金原出版 2013.
  5. Berger-Kulemann V, et al. Eur J Surg Oncol. 2012;38(8):670-676.
  6. Shin NY, et al. Eur Radiol 2012;22(4):864-871.
  7. van Kessel CS, et al. Ann Surg Oncol. 2012;19(9):2805-2813.

EOB・プリモビストを用いた腹部MRI検査の方法(標準的なプロトコール)

手順とSequence Parameter

手順とSequence Parameter

造影剤の投与方法

造影剤の投与方法

参考:造影CT検査(標準的なプロトコール)

参考:造影CT検査(標準的なプロトコール)

Case Presentation(症例 1 上行結腸癌 同時性肝転移)

症例背景とMRI検査の目的

70歳代 女性.
食欲不振と排便困難を主訴として来院.術前造影CTにて,右側肺に1カ所の5mm小結節,上行結腸に漿膜浸潤と領域リンパ節転移,肝両葉に多発肝転移が示唆される進行上行結腸癌が指摘された.原発巣は根治切除可能と判断され,肺小結節は経過観察対象であることから,肝転移に対する根治的肝切除を目的にEOB-MRIを施行した.

造影CT(門脈相)

造影CT(門脈相)

CT所見

造影CT動脈相と門脈相で,矢印()で示した7カ所の低吸収域が指摘可能であった.(動脈相画像は非提示)

EOB-MRI(肝細胞造影相)

EOB-MRI(肝細胞造影相)

EOB-MRI所見

造影CTで検出した結節()に加え,新たに6個の結節()を検出した.

S6結節のCT, MRI画像

S6結節のCT, MRI画像

S6の結節は,造影前T1強調画像で低信号,T2強調画像でやや高信号,動脈相で辺縁が造影され,肝細胞造影相では明瞭な低信号を示す.典型的な肝転移の所見である.EOB-MRIで結節を確認後,造影CT画像を見るとその存在が確認できる.

本症例におけるEOB-MRI診断結果の有用性

一般的に大腸癌原発巣切除前には,胸部から骨盤までの遠隔転移の確認を含めた造影CTが撮像される.この術前CTにおいて肝転移が疑われる場合には,EOB-MRIを必ず施行することになっている.5mm未満の微小肝転移の検出だけでなく,Glisson鞘や肝静脈に近接する病変も正確に検出することにより,術後抗癌剤治療に重大な影響を与える病変を含めた遺残のない肝切除領域を設定することができ,根治的な肝切除を行うことが可能であった.

Case Presentation(症例 2 上行結腸癌,異時性肝転移)

症例背景とMRI検査の目的

70歳代 女性.
下痢を主訴に来院.原発巣切除時の造影CTでは肝転移は指摘されず,術後半年の造影CTにおいて肝S6に単発肝転移を指摘された.術後半年の肝転移再発であることからFOLFOX療法が開始されたが,5コース終了後もCEA/CA19-9の上昇を認めたため,再度造影CTとEOB-MRIを施行した.

原発巣切除後の肝CT/MRI画像

原発巣切除後の肝CT/MRI画像

化学療法前後の画像所見

化学療法前のEOB-MRI及び,化学療法施行後のDynamic造影CT門脈相では肝実質は均一であったが,化学療法施行後のEOB-MRI肝細胞造影相において矢印()で示す領域にReticular hypointensity(網状の低信号)を確認することが可能であった.
*S6の肝転移は().

EOB-MRI

EOB-MRI

EOB-MRI所見

造影前T1強調画像,T2強調画像,動脈相,門脈相,後期相の全てで肝実質intensityの変化は認めなかったが,肝細胞造影相において矢印()で示す領域にReticular hypointensity(網状の低信号)を確認することが可能であった.

本症例におけるEOB・プリモビスト造影MRIの有用性

抗癌剤治療後のEOB-MRIにて単発肝転移であることを確認し,根治的肝切除を施行した.また,EOB-MRIの肝細胞造影相において肝切除予定領域の網状の低信号領域(Reticular hypointensity)を確認し,術中肉眼肝所見から同部位の類洞閉塞症候群と診断しえた.EOB-MRIは,抗癌剤治療症例における肝転移検出力が低下することなく,肝実質障害度診断も可能であることが確認された.

使用上の注意

4.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので, 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.

副作用(承認時)

総症例1,755例中76例(4.33%)に副作用が認められた. 主な副作用は, 血管拡張(熱感, 潮紅)16例(0.91%), 悪心12例(0.68%), 味覚倒錯9例(0.51%), 頭痛8例(0.46%)等であった.( 承認時:国内及び海外臨床試験の合計)