EOB・プリモビスト造影MRIによるcTACE、DEB-TACEの治療効果判定

福井県済生会病院 放射線科
宮山 士朗 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

はじめに

福井県済生会病院 放射線科 宮山士朗 先生

本邦での肝動脈化学塞栓療法(TACE)は, リピオドール(Lip)とゼラチンスポンジ(GS)を用いるconventional TACE(cTACE)が主流であるが,2014年初頭より薬剤溶出性ビーズ(DEB)も導入された. DEB-TACEのコンセプトは,腫瘍血管や腫瘍近傍の血管内に抗癌剤を徐放する小粒子を充填し, 阻血と抗癌作用の2つの効果で腫瘍を壊死に陥らせるというものである. 治療成績はcTACEと同等と評価されているが, 肝予備能不良例や進行した腫瘍での有効性に期待がもたれ, 各施設で様々な検討がおこなわれている.
その一方で, TACE不応となった場合には, 分子標的治療薬など, 次の治療法を速やかに検討する必要があるため,より正確な治療効果判定が求められる. T A C E 後の治療効果判定にはC TやE O B・プリモビスト造影M R I(EOB-MRI)が用いられるが, cTACEの場合には腫瘍内に集積したLipの影響により, 正確な評価が困難な場合がある. またDEB-TACE後には微細な残存腫瘍と治療に伴う炎症との区別が難しい場合がある. われわれはTACE後には原則的にCTとEOB-MRIを2~3ヵ月毎に交互に施行しているが, CTで再発(残存)が疑われるものの確診できな い場合にもEOB-MRIで評価している. 今回, TACE後の経過観察にEOB-MRIが有用であった2例を供覧する.

はじめに

EOB・プリモビストを用いたMRI検査の方法

手順とSequence Parameter

手順とSequence Parameter

造影剤投与方法

造影剤投与方法

CT検査の方法

CT検査の方法

Case Presentation 1

症例背景とMRI検査の目的

70歳代,男性.
突然の激しい腹痛と血圧低下を認め,近医にて肝細胞癌の破裂による腹腔内出血と診断され,当院に搬送された.

CT,DSA画像

CT,DSA画像

CT,DSA所見

ダイナミックCT動脈優位相(a,b)でS8に5.5cm,左葉外側区に4.1cm,S4に7mm大()の早期濃染を示す腫瘍と,腹腔内出血と左葉外側区の腫瘍からの造影剤の血管外漏出を認めた() . また,S8腫瘍の右側部分は早期濃染を示さなかった.
緊急DSA(c)ではショック状態のため,血管は狭小化しており,両葉に腫瘍濃染を認めた(). 左肝動脈造影にて血管外漏出を認め,ゼラチンスポンジ(GS)による塞栓術を施行し,止血が得られた.

EOB-MRI画像

EOB-MRI画像

EOB-MRI所見

8日後に施行されたEOB-MRIでは,S8腫瘍はT1強調画像 in phaseで低信号,out of phaseでは右側部分の信号低下を認め,脂肪沈着と考えられた. T2強調画像では高信号を呈した(画像非提示). 動脈優位相(d)で腫瘍の左側部分は早期濃染を示し,肝細胞造影相(e)では右側部分は明瞭な低信号, 左側部分は軽度低信号を示した. またS4の腫瘍も肝細胞造影相(f)で低信号に描出された(). 尚,腹腔内出血は減少していた. 18日後にS8とS4の腫瘍に対し,リピオドール(Lip)8mL,エピルビシン(EPI)30mg,マイトマイシンC(MMC)6mgの懸濁液とGSを用いてcTACEを施行した. 1週間後の単純CT(g)では,腫瘍には脂肪沈着部を除き高濃度にLipが集積していた.

治療経過中のCT,EOB-MRI画像

治療経過中のCT,EOB-MRI画像

EOB-MRI ,CT所見

9ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相(h)で腫瘍の頭側に再発を認め() Lip 4mL, EPI 20mg,MMC 4mgの懸濁液とGSによるcTACEを施行したが, 2年10ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相(i)で腫瘍の腹側に再発を認め(),再度Lip 4mL,EPI 20mg,MMC 4mgの懸濁液とGSによるcTACEを施行した. 3年7ヵ月後のダイナミックCT動脈優位相(j)では明らかな再発は指摘できなかったが,3年10ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相(k)で尾側に再発を認めた().

DEB-TACE時のDSA画像

DEB-TACE時のDSA画像

DSA所見

cTACE後に局所再発を繰り返すためDEB-TACEの適応と判断した. 総肝動脈DSA(l)で淡い腫瘍を認め(),イオパミロン370と等量の生理食塩水で希釈した100~300μmのディーシービーズ 2mgに50mgのEPIを含浸させたDEBを用いて,2本のA8()を塞栓した(DEB使用量0.2mg).

DEB-TACE後のCT,EOB-MRI画像

DEB-TACE後のCT,EOB-MRI画像

CT,EOB-MRI所見

DEB-TACE 施行約2ヵ月後のダイナミックCT動脈優位相(m)では,Lipの影響のため正確な治療効果判定は困難であったが,5ヵ月後(初回治療より4年4ヵ月後)のEOB-MRI動脈優位相(n)では,治療前に認められた早期濃染は消失しており,再発なしと判定した.

本症例におけるEOB-MRI診断結果の有用性

cTACE後の治療効果判定の場合,CTでは腫瘍壊死部に濃縮されたLipからのアーチファクトや部分容積現象により,特に腫瘍辺縁部での正確な評価が困難となる. そのため治療効果が過大評価される危険性があり,EOB-MRIでの評価の方が望ましい. 本例でも3年7ヵ月後のCT時に再発が存在していた可能性がある. またDEB-TACE後の効果判定でも,以前に注入されたLipの影響を受けないEOB-MRIの方が,再発のないことを明瞭に示していた.

Case Presentation 2

症例背景とMRI検査の目的

80歳代,男性.
他院で閉塞性動脈硬化症の精査目的に施行されたCTで肝に腫瘍を認め,当院に紹介となった.

CT,DSA画像

CT,DSA画像

CT,DSA所見

S6に単純CT(a)で低吸収,動脈優位相(b)で早期濃染を示し,平衡相(c)ではwash outを示す6.3cmの腫瘍を認めた.
DSA(d)では明瞭な腫瘍濃染を認めた.

治療経過中のCT,EOB-MRI画像

CT,EOB-MRI 所見

CT,EOB-MRI 所見

単発であったが高齢のため,Lip 6mL,EPI 30mg,MMC 6mgの混合液とGSを用いたcTACEを施行した. 1週間後の単純CT(e)では, 腫瘍に高濃度にLipが集積していたが, 背側部分で治療安全域が不足していた(). 4ヵ月後のダイナミックCT動脈優位相(f)で腫瘍背側に再発が疑われ(),EOB-MRIが施行された. 動脈優位相はアーチファクトのため評価困難であったが,門脈優位相(g)と肝細胞造影相(h)で明瞭な再発を認め(),Lip 3mL, EPI 20mg, MMC 4mgの懸濁液とGSによるcTACEを追加した.

EOB-MRI 所見

EOB-MRI 所見

1年6ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相(i)で同じ部位に再発を認め(),再度Lip 4mL,EPI 20mg,MMC 4mgの懸濁液とG Sによるc T A C Eを施行した.しかし,2 年後のEOB-MRI動脈優位相(j)ではアーチファクトが目立つものの同部に再発を認めた.

DEB-TACE時のDSA画像

DEB-TACE時のDSA画像

DSA所見

cTACE後に局所再発を繰り返すためにDEB-TACEの適応と判断し,Case Presentation 1と同じDEBを作成した. 総肝動脈DSA(k)で腫瘍濃染を認め,A5の1枝,A6の2枝からDEB-TACEを施行した()(DEB使用量0.8mg). なお,A6の1枝の塞栓では少量のGSを追加した.

DEB-TACE後のCT,EOB-MRI画像

DEB-TACE後のCT,EOB-MRI画像

CT,EOB-MRI所見

3ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相はアーチファクトのため評価困難であったが,門脈優位相(l)で腫瘍辺縁部に線状の染まりを認め(),5ヵ月後のEOB-MRI動脈優位相(m)では増大し()再発と診断,他にも3個の新病変を認めた. Lip 4mL,EPI 20mg,MMC 4mgの懸濁液とGSを用いたcTACEを施行し,1週間後の単純CT(n)では再発部と周囲肝実質に高濃度のLip集積を認めた. 3ヵ月後(初回治療より2年8ヵ月後)のEOB-MRI動脈優位相はアーチファクトのため評価困難であったが,門脈優位相(o)では再発なしと判定した.

本症例におけるEOB-MRI診断結果の有用性

本例ではEOB-MRIの動脈優位相はアーチファクトのためしばしば評価困難な場合があったが,門脈優位相で再発腫瘍は周囲肝より低信号で辺縁部に染まりを認め,肝細胞造影相でも壊死部とviable portionでは信号強度が異なっており,再発の診断は容易であった. DEB-TACE後に腫瘍内や辺縁部に濃染が認められる場合は,残存腫瘍の可能性があるため注意を要する. またこの所見は塞栓に伴う腫瘍周囲のAP shuntや炎症と区別する必要がある.

使用上の注意

4.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので,患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.