EOB・プリモビスト造影MRIによるTACE前の腫瘍肉眼型診断

近畿大学医学部
放射線医学講座 放射線診断学部門
鶴﨑 正勝 先生, 村上 卓道 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

はじめに

肝癌取扱い規約(第5版)において肝細胞癌の腫瘍肉眼型は①境界不明瞭型,②単純結節型,③単純結節周囲増殖型,④多結節癒合型,⑤浸潤型に大別されている.浸潤型を除く結節型肝細胞癌において腫瘍肉眼型が③④を示す肝細胞癌は, 病理学的脈管侵襲, 肝内転移の頻度が高く, 切除例または肝移植例において有意な予後不良因子と報告されている.よってこれらの腫瘍に対しては系統的肝切除術が望まれるが,切除困難例では肝動脈化学塞栓術(TACE)が行われることも多い.TACE施行例における腫瘍肉眼型別の予後や再発頻度に対するまとまった報告は少なく,いまだ意義は不明であるが, 経験的に単純結節周囲増殖型や多結節癒合型においてTACEの効果不良例や早期再発例が多い印象はある.故にTACE術前にその腫瘍肉眼型を評価することは, TACE時の治療範囲,薬剤量や塞栓程度,またはRFA併用の有無やTACE後のソラフェニブなどの分子標的薬の早期導入など, 治療方針の決定に重要と考えられる.
今回,単純結節周囲増殖型と単純結節型を示す肝細胞癌が併存し,TACE時の術前画像診断においてEOB・プリモビスト造影MR(I 以下EOB-MRI)が腫瘍肉眼型の評価に有用であった症例を経験したので報告する.

EOB・プリモビストを用いたMRI検査の方法

手順とSequence Parameter

手順とSequence Parameter

造影剤投与方法

造影剤投与方法

造影CT検査の方法

造影CT検査の方法

Case Presentation

症例背景とMRI検査の目的

60歳代 女性.
40歳頃より肝障害を指摘されていた. 健診のUSにて肝SOLを指摘され, 平成24年6月に近医にて造影CTを施行.
その際にS3, S8にそれぞれ3cm大のHCCが疑われ, 精査加療目的にて紹介受診となった.

造影CT画像

造影CT画像

CT所見

肝S8にダイナミック造影CT動脈相(a)で濃染を示し, 門脈相(b)で内部はwash outされ, 周囲に被膜様造影効果を呈する25mm大の腫瘤を認めた.
被膜を有する肝細胞癌と考えられたが, 一部辺縁不整で腫瘍肉眼型は評価が難しい.

EOB-MRI画像

EOB-MRI画像

EOB-MRI所見

肝S8にT1強調画像(c)で等~軽度高信号(), T2強調画像(d)で高信号の25mm大の腫瘤を認めた().
EOB-MRIの動脈相(e)では比較的均一に濃染され, 一部背側に濃染の強い突出する領域を認めた(). 後期相(f)ではwash outされ, 肝細胞造影相(g)ではEOB・プリモビストの取り込み欠損を示し, 動脈相で見られた背側の突出する部位も取り込み欠損域として見られ腫瘍の一部と考えられた(). 肝細胞造影相の冠状断(h)でも腫瘍の辺縁は不整で(),腫瘍肉眼型の評価としては被膜外浸潤を伴う, 単純結節周囲増殖型と診断された.
なおS3にも30mm大の肝細胞癌を認め, こちらは, EOB-MRIの肝細胞造影相(i)において辺縁は全周にわたり整で, 腫瘍肉眼型の評価としては単純結節型と診断した.

治療経過

両葉多発例で, 肝機能からも手術は困難であり, 経カテーテル的動脈化学塞栓術(TACE)を施行した.
TACE時のDSA像(j)では肝内に2か所の腫瘍濃染を認め(), それぞれCDDP 20mg+Lipiodol 2mLずつのエマルジョンおよびゼラチン粒にて選択的にTACEを施行した. TACE直後の単純CTではそれぞれの肝細胞癌に対するリピオドールの集積は良好であった(k, l).
6か月後の経過観察のための造影CT動脈相では、S3の肝細胞癌のリピオドールの集積は良好で、再発を認めていないが,単純結節周囲増殖型と思われたS8の肝細胞癌の近傍に濃染が出現し局所再発と考えられた(m,( )).

治療経過

本症例におけるEOB-MRI診断結果の有用性

本症例は切除不能例であり, 病理学的検討はなされていないが, TACE前のEOB-MRIにおいて単純結節周囲増殖型と単純結節型の肝細胞癌が併存していることが示唆された.
いずれも選択的なTACEが行われたにも関わらず, 単純結節型は効果良好であったが, 単純結節周囲増殖型と考えられた結節は比較的早期に局所再発した.
TACE前に, EOB-MRIを中心とした画像診断により単純結節周囲増殖型と考えられる結節に対しては, 治療や治療後の経過観察では十分な注意が必要であり, 場合によってRFAの併用や術後の分子標的薬治療の早期導入などの工夫が必要と考えられた教訓的な症例であった.

副作用(承認時)

総症例1,755例中76例(4.33%)に副作用が認められた. 主な副作用は, 血管拡張(熱感, 潮紅)16例
(0.91%), 悪心12例(0.68%), 味覚倒錯9例 (0.51%), 頭痛8例(0.46%)等であった.
( 承認時:国内及び海外臨床試験の合計)

使用上の注意

4.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので, 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.