EOB・プリモビスト造影MRIによる大腸癌肝転移の診断

埼玉医科大学国際医療センター 
画像診断科
岡田 吉隆 先生
消化器外科
小山 勇 先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

はじめに

近年のわが国の部位別がん死亡率の統計によると, 大腸(結腸・直腸)のがんによる死亡数は, 男性では肺・胃・肝に次いで4位, 女性では1位となっており, その診断・治療は重要な課題である. 他臓器の癌と異なり, 大腸癌においては遠隔転移を生じていても外科的な完全切除により長期生存や完治が望めるため, 転移の部位・数・大きさを正確に診断する必要がある. 肝転移の診断は, 超音波・CT・MRIなどの情報を総合して行われるが, 最近, EOB・プリモビストによる造影MRIが加わって, 小さな転移病変の診断能が大きく向上した. その一例を呈示する.

EOB・プリモビストを用いた腹部MRI検査の方法

手順とSequence Parameter

手順とSequence Parameter

造影剤の投与方法

造影剤の投与方法

参考:本症例のCT検査

参考:本症例のCT検査

Case Presentation

症例背景とMRI検査の目的

60歳代 男性. 大腸癌の肝転移. 直腸癌(深達度SS, StageIIIb)に対する低位前方切除後で, UFT・ユーゼルによる術後化学療法を施行していた. 経過観察中, 初回手術から9ヵ月後に施行したCT検査にて, 肝右葉S7に転移の出現を認めたため, 手術適応の評価の目的でEOB・プリモビスト造影を含めた肝のMRI検査を施行した.

CT画像

CT所見

CT所見

造影CTの平衡相(b)にて, 肝右葉S7に径14mmの低吸収域が認められる(). 7ヵ月前のCTには見られなかった所見であり,肝転移と診断した. なお, 後日施行したEOB・プリモビスト造影MRIで検出された他の病変に相当する部分(a, c )は, 見直してみると不明瞭な淡い低吸収域が描出されていたが, MRI所見を参照せずにこの所見を指摘することはきわめて困難である.

EOB・プリモビスト造影MRI画像

EOB・プリモビスト造影MRI所見

EOB・プリモビスト造影MRI所見

ダイナミックMRIの動脈相(d)において, 肝S7の腫瘍は辺縁に輪状の増強効果を示している().
CTで指摘された病変(f )は, 肝細胞造影相では明瞭な低信号域となっている. さらに, 肝S7の別の部位(e, g ) に,径10~15mmの明瞭な低信号域が2箇所認められ, 多発肝転移であることが判明した.

MRI画像

T2強調画像所見

T2強調画像所見

CTでも検出された最大の病変は, 辺縁部が淡い高信号, 中心部(壊死部分)が強い高信号となる同心円状の構造を示している(h ). 他の1個の病変はごく淡い高信号域として描出されている(i ). もう1個の病変はほとんど等信号で検出不能であった. これらの所見から, いずれも囊胞や血管腫は否定的と考えられる.

拡散強調画像所見

拡散強調画像所見

肝S7の3箇所の病変(j, k  )は, いずれも著明な高信号を示している.

治療経過

CTをはじめとする各種検査で肝以外に転移病変がないことを確認し, 手術が行われた. 術中エコーにて病変の局在を確認し, 3箇所の病変を含む形で切離ラインを決定し, 肝S7部分切除術を施行した. 切除標本の病理所見にて, いずれも直腸癌の転移と診断された.

まとめ

近年, 大腸癌の治療においては, 化学療法にも大きな進歩がみられているが, 転移を含めた病変を外科的に完全に切除することが完治への最善の手段であることに変わりはなく, 術前画像診断の役割はきわめて大きい.

EOB・プリモビスト造影MRIは, CTで指摘困難な肝の小病変を鮮明に描出し, 精度の高い術前診断のために非常に有効である. また, 肝細胞相の画像では肝内の脈管構造(門脈・肝静脈)も鮮明に描出されるので, それらと病変との位置関係の把握も容易である.

ただし, EOB・プリモビスト造影MRIの肝細胞造影相における低信号域は非特異的な所見であり, 検出された結節が本当に転移なのか, あるいは偶然合併した良性病変(囊胞・血管腫など)なのかについては, 他の撮像法と総合して診断することが大切である. 囊胞・血管腫は頻度が高いので問題となることは多いが, いずれもT2強調画像で非常に強い高信号を示すことが重要な鑑別点となる. また, 呈示症例でもみられるように, 小さな肝転移の確認には拡散強調画像も有用なことが多く, 我々も積極的に利用している. 肝転移は小さなものでも明瞭な高信号を示すが, 囊胞はb=1000sec/mm2では信号が消失し, 容易に鑑別できる. 血管腫は時に紛らわしい所見を示すこともあり, ダイナミックMRIの造影パターンを注意深く読影する. EOB・プリモビスト造影MRIでは周囲肝の信号が経時的に上昇するため, 門脈相~平衡相での病変部の造影効果の有無については慎重に判断する必要がある.

EOB・プリモビスト造影MRIと拡散強調画像の組み合わせにより, 小さな肝転移の診断精度は数年前に比べて大きく向上し, 読影も容易になったと感じている.

副作用(承認時)

総症例1,755例中76例(4.33%)に副作用が認められた. 主な副作用は, 血管拡張(熱感, 潮紅)16(0.91%), 悪心12例(0.68%), 味覚倒錯9例(0.51%), 頭痛8例(0.46%)等であった(. 承認時:国内及び海外臨床試験の合計)