肝細胞癌の肝内転移と多中心性病変

山梨大学医学部
第一外科
松田 政徳先生, 藤井 秀樹先生
放射線科
市川 智章先生, 佐野 勝廣先生

ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌、原則禁忌を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。

症例背景とMRI検査の目的

70歳代 男性.
多発性肝細胞癌(肝内転移+多中心性発生早期肝細胞癌). 近医でのC型慢性肝炎の経過観察中, 腹部超音波検査にて肝腫瘤を指摘され, 精査・加療目的で当院を紹介され入院した. 入院時の検査では, HCV抗体陽性, HBs抗原陰性, HBs抗体陽性, HBc抗体陽性, ICG 15分値 28.2%, 肝障害度はB, Child-Pugh分類は6点でAであった. 腫瘍マーカーでは, AFP 42.2ng/mL, L3分画1.5%, PIVKA-Ⅱ 30mAU/mLとAFPの上昇を認めた.

既往歴:37歳時虫垂炎手術. C型慢性肝炎.
患者背景:輸血歴なし. アルコール多飲歴あり. 喫煙歴あり.
身体所見:貧血, 黄疸, 脳症なし. 胸部異常所見なし. 右下腹部に手術瘢痕あり. 肝臓を右季肋下正中に2横指触知. 脾臓は触知しない. 腹水なし.

撮像パラメーターと造影剤の投与方法

手順とSequence Parameter

手順とSequence Parameter

造影剤の投与方法

造影剤の投与方法

留意点・補足

  • 投与量:規定用量
  • 注入速度:推奨されている速度は1.0~2.0mL/sec

参考:造影CT検査(標準的なプロトコール)

参考:造影CT検査(標準的なプロトコール)

画像所見

CT画像

MRI画像

MRI画像

治療経過

画像診断より, 肝内側区域S4の2.5cmの進行型肝細胞癌および肝外側区域S2の肝内転移,肝S4/8の多中心性発生高分化型肝細胞癌との術前診断で, 術式としては左肝切除, 前区域部分切除が理想であるが, 肝機能を考慮し, 内側区域切除,肝S2部分切除, 肝S4/8部分切除, 胆嚢摘出術を実施した. 術後経過は良好で, 第14病日に退院した.

病理所見

病理所見

まとめ;
EOB・プリモビスト造影MRIは、ダイナミックCT、CTHA/CTAPに比べ早期肝細胞癌の検出能が高く、多中心性発生肝細胞癌の診断においてきわめて有用なモダリティである。

肝細胞癌は高率に肝内転移を来すだけでなく, 同時性, 異時性に多中心性発癌を引き起こす. 多発性肝細胞癌症例において副腫瘍が肝内転移か多中心性発癌か画像的に診断可能であれば, 治療法の決定に有用と考えられる. つまり, 系統的に切除可能な範囲を超えた肝内転移による多発性肝細胞癌症例は切除治療による根治は困難であるが, 多中心性発癌による多発肝細胞癌症例では根治切除が可能な場合がある. また, 乏血性の早期肝細胞癌は単独では切除の適応とはならないが, 早期肝癌の存在が術前に診断されていれば, 進行型肝細胞癌の切除治療に際してこれらを同時に切除または焼灼治療することが可能となり, 肝切除後の再発抑制に貢献するものと期待される.

原発性肝癌取り扱い規約によると, 肝細胞癌の複数の病変が見られ, 異型結節や既存の肝構築を保つ早期肝細胞癌, さらに中分化, あるいは低分化癌組織の辺縁に高分化癌組織の存在を認める肝細胞癌はその場で発生し増殖しつつあることが強く推察され, これらの病変の存在は多中心性発生と考えられるとされている. 一方, 肝内転移は, ①門脈腫瘍栓あるいはこれを基盤として増殖したと考えられる癌病変, ②最大の癌腫の近傍に多く, 離れるに従って数が少なくなるような癌病変群, ③孤立性の癌病変でも, 最大癌腫の近傍にあり, それに比して明らかに小さくかつ組織型がそれと同様か分化度が低い癌病変, とされている.

画像的に多中心性肝細胞癌と診断するためには, 高分化な早期肝細胞癌を診断するか, 癌結節周囲の高分化癌成分を検出することが必要となる. 早期肝細胞癌の検出能は, ダイナミックCT, CTHA, CTAPと比較して, EOB・プリモビスト造影MRIが最も高いことが当院の臨床データでも証明されている. また, EOB・プリモビスト造影MRIにより, 癌結節周囲の高分化型癌成分が明瞭に検出可能な症例も多数経験しており, 多中心性発生肝細胞癌の画像診断において, EOB・プリモビスト造影MRIはきわめて有用なモダリティである.

【副作用(承認時)】

総症例1,755例中76例(4.33%)に副作用が認められた. 主な副作用は, 血管拡張(熱感, 潮紅)16例(0.91%), 悪心12例(0.68%), 味覚倒錯9例(0.51%), 頭痛8例(0.46%)等であった.( 承認時:国内及び海外臨床試験の合計)

【使用上の注意】

4.
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので, 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.